#790 レビュー論文を読む感覚でポッドキャストを聞いてみる

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アスリートにトレーニング指導をするS&Cコーチにとって、できるだけ科学的知見にもとづいたサービスを提供することは、「義務」と言ってもいいくらい重要なことです。

とはいえ、研究者でもないS&Cコーチが毎日のように関連論文を読み込んで、S&C関連のあらゆるトピックの研究結果に精通し続けるのは、容易なことではありません。

 

そんなS&Cコーチにとって、特定の研究テーマについての科学的知見をまとめた文章、すなわち「レビュー論文」というのは、とても助かるシロモノです。

特定のテーマについて、その時点でわかっている科学的知見を一気に知ることができるので、時間効率が良いです。

また、レビュー論文を読んだ上で、そこで引用されている個々の論文をさらに読み進めていけば、そのテーマについての知識をさらに深めることも可能です。

 

レビュー論文も万能ではないので、読み方や解釈の仕方、実際のトレーニング指導への取り入れ方etcには注意が必要です。

それでも、S&Cコーチにとっては強い味方であることは間違いありません。

 

 

レビュー論文を読む感覚でポッドキャストを聞いてみる

レビュー論文を読むのと同じ感覚で、特定の研究テーマについてその時点でわかっていることを知ることができる便利な方法が他にもあります。

それが「ポッドキャストを聞く」というやり方です。

まあ、ポッドキャストそのものは単なる音声配信なので、ポッドキャストなら何でもいいってわけではないのですが。

もっと具体的にいうと、「特定の研究テーマにおける第一人者である研究者が、その研究テーマについて語っているポッドキャストを聞く」というやり方です。

 

研究者がポッドキャストで話す場合は、レビュー論文を書くときと比べると、話す内容をそこまで精査しているわけではありません。

したがって、内容の厳密さについてはレビュー論文に軍配が上がります。

しかし、これは逆に言うと、カジュアルにわかりやすい話し言葉で説明してくれているということでもあります。

S&Cコーチとしては、聞いていて「わかりやすい・理解しやすい」というメリットに繋がるはずです。

 

私自身の経験としても、特定の研究テーマについてポッドキャストで話を聞いてから、同じテーマについてのレビュー論文を読み直したりすると、理解度がアップすることが多いです。

これは以前からも書いていることですが、「聞く」「読む」という異なるインプット方法を組み合わせることのメリットだと思います。

» 参考:受ける側としての「聞く・読む」と提供する側としての「話す・書く」 〜内容がかぶっても異なる手法を組み合わせることで効果はあがる

 

 

超えるべきハードル

レビュー論文を読む感覚でポッドキャストを聞くのは、S&Cコーチが科学的知見を仕入れるためには非常に有効な方法です。

しかし、簡単ではありません。

いくつか超えるべきハードルが存在しています:

  • ①特定の研究テーマにおける第一人者を見つけないといけない
  • ②英語で聞いて理解しないといけない

 

①特定の研究テーマにおける第一人者を見つけないといけない

たとえば、「テーパリング」について学びたいと考えて、ポッドキャストを探すとします。

できれば「テーパリング」についての研究の第一人者が語っているポッドキャストを聞きたいところです。

そんなに詳しくない人が「テーパリング」について語っているポッドキャストを聞いても、内容が間違っているかもしれないし、それほど勉強にならない可能性が高いので。

 

で、「テーパリング」研究の第一人者といえば、Dr. Mujikaです。

これはテーパリング関連論文を少しでも読んだことがある人であれば、同意するところだと思います。

(研究テーマによっては、第一人者がひとりに絞られずに複数いる場合もあります)

Google検索やPodcastアプリ等で「Mujika tapering podcast」みたいに検索すれば、いくつかのポッドキャストがでてくるので、それらを聞けばよいわけです。

 

ここで問題になってくるのは、まずは特定の研究テーマにおける第一人者を見つけないといけない、という点です。

これが最初に超えないといけないハードルです。

特定の研究テーマにおける第一人者を見つけるためには、ある程度その研究テーマに関する論文を読んでおかないといけないからです。

「いやいや、論文を読み込む時間がないS&Cコーチがサクッと科学的知見を仕入れる方法としてポッドキャストを紹介しておきながら、ある程度論文を読んでおかないといけないっておかしいだろ!!」というツッコミが聞こえてきそうです。

おっしゃるとおりで反論のしようがないですが、これはしょうがないです。

 

とはいえ、別にガッツリと論文を読み込まないと第一人者が見つからないわけではありません。

たとえば、特定の研究テーマに関するレビュー論文を書いている著者は、そのテーマについて第一人者である可能性が高いので、まずはレビュー論文を検索して見つけてみるとよいでしょう。

また、レビュー論文の最後にある引用文献リスト(Reference)には、そのテーマに関連する論文がずらーっと並んでいるので、そこに頻繁に名前がでてくる研究者は、そのテーマについての第一人者である可能性が高いです。

これらの手法を使ったりしながら、みなさんが興味のある研究テーマにおける第一人者のあたりをつけてみてください。

 

「そんなこと言われても、どこから手を付けていいかわからない」という方は、こちらのポッドキャストから始めてみてください↓

“We Do Science” – The Performance Nutrition Podcast

こちらのチャンネルでは、ホストのDr. Bannockがさまざまな研究テーマにおける第一人者を招いてインタビューをしています。

いろいろなS&C関連テーマの研究についてそこそこ精通している私から見ても、第一人者と呼べる人物ばかりがラインナップされています。

「誰が第一人者なのかあたりをつけることすら難しい」という方は、とりあえずこちらのチャンネルから聞き始めれば失敗しないはずです。

 

 

②英語で聞いて理解しないといけない

超えないといけないハードルの2つめは、特定の研究テーマにおける第一人者が語っているポッドキャストの多くは英語で配信されている、という点です。

研究というのは世界中でやられていることなので、特定の研究テーマにおける第一人者が日本人である確率は低いです(ゼロではありません)。

また、仮に日本人だったとしても、その人が日本語でポッドキャストを発信している確率はさらに低いです。

 

スポーツ科学に関連して発信されているポッドキャストの多くは英語です。

科学の世界では英語が共通語なので、たとえ英語が母国語ではない研究者であっても、英語で語ったりしていることが多いのです。

うえで紹介したDr. Mujikaもスペイン出身なので英語はネイティブではありませんが、その発信の多くは英語でされています。

 

「英語で聞いても理解できない」

そう思われる読者もいるかもしれませんが、そこで諦めてしまうのは非常にもったいないことです。

ポッドキャストは何回も聞き直すことができるので、英語リスニングの良い勉強にもなります。

また、同じ研究テーマについてのレビュー論文をあらかじめ読んでおけば、理解できる確率はグンとアップします。

「聞く」と「読む」を組み合わせると理解度がアップするというのは、内容の理解度だけでなく英語の理解度にも当てはまります。

読むほうが辞書を使いながらできるので難度は低いですが、次のステップとして英語で読むことにも挑戦してみてください。

» 参考:S&C情報を英語で収集する能力を身につける|まずは読む能力→そのあとに聞く能力

 

 

まとめ

科学的知見なんて活用しなくても、英語で情報なんかインプットしなくても、トレーナーとしてビジネス的にはうまくやっていくことはできるかもしれません。

しかし、S&Cコーチとしてアスリートの競技力向上に責任をもって仕事をしていく覚悟があるなら、英語のポッドキャストを聞いて特定の研究テーマについての知識を仕入れることはオススメです。

なにより、多くのポッドキャストは無料で配信されています。

活用しない手はありません。

 

 

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【編集後記】

水道料金が一気に高くなって「なんでだろう」と不思議だったのですが、おそらく生まれたばかりの息子の沐浴が原因だろうという推理に落ち着きました。

この推理が正しければ、次回の水道料金は以前の水準に戻るはず。