東京オリンピックが閉幕して、しばらくたちました。
その結果について、とくにメダルが期待されながら獲得できなかったアスリートやチームについて、その原因を解説するような記事も目にするようになりました。
アスリートや関係者たち自身が、オリンピックに向けての準備等について振り返ることは全然OKです。
しかし、外野の人間が、結果がでてからその原因を後付であーだこーだ言うのは非常に卑怯だと感じます。
五輪でメダル候補の日本選手がなぜ早々に敗退? トレーナーが解説(日経グッデイ)https://t.co/gltmU4lBJ7
結果が出た後に、後出しジャンケンで外野がごちゃごちゃ言うのは卑怯です。
言うんだったら、オリンピック前に言っておけ。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
競技スポーツの勝負の行方は紙一重
とくにオリンピックのような競技レベルの高いところでの争いにおいては、勝負の行方は紙一重です。
勝負事なので、時の運みたいなところが多分にあります。
それは、今回の東京オリンピックをみていても、改めて強く感じたところです。
それにしても「スポーツの結果は紙一重だ」としみじみ感じます。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
たとえば、私のクライアントさんである見延選手が出場して金メダルを獲得したフェンシング男子エペ団体。
私は1回戦からネットで観戦していましたが、1回戦ではアメリカに一時8点くらいリードされて、負けを覚悟しました。
エペという種目ではリードしているほうが圧倒的に有利なので、8点差はかなり絶望的な差だったのです。
それが、交代出場した宇山選手の活躍もあり、なんとか逆転をして勝利することができました。
2回戦ではフランスと最後44対44の同点で、あと1点先にとったほうが勝ちという状況になりました(フェンシング界では「一本勝負」と呼ばれます)。
この一本勝負という場面はフェンシングではしばしばあるのですが、どっちが勝つかは半分は運みたいなものです。
幸い、加納選手が得点して一本勝負を制して勝つことができましたが、「運」以外に明確にその理由を解説できる人なんていないでしょう。
競技スポーツの真剣勝負なんて、そんなものです。
つまり、1回戦もしくは2回戦敗退と金メダル獲得との間に、それほど大きな差はなく、本当に紙一重、運の要素が大きかったということです。
もっというと、男子エペ団体戦では自力でのオリンピック出場権獲得を逃していたのに、今回は開催国枠の恩恵を受けて出場できた、という事情があります。
金メダルを獲得したチームが、もしかしたらオリンピックに出場すらできていなかったかもしれないのです。
本当に紙一重です。
もちろん、運が味方をしてくれたとしても、そもそも紙一重の勝負にすら持ち込めないほどの大きな実力差がある場合には、勝つことができません。
したがって、今回金メダルを獲得したフェンシング男子エペ団体チームには、もともと金メダルを獲得しうるだけの実力があったのは間違いありません。
世界ランク上位者が負けたら「オリンピックには魔物がいる」?
近年、さまざまな競技で「世界ランク制度」が採用されています。
オリンピック出場権も、この世界ランクにもとづいて決まるケースが多いでしょう。
一般的には、過去1年間に出場した複数の大会における成績に応じてポイントが蓄積していき、そのポイント総数によってその時点での世界ランクが決まる、というケースが多いと思われます。
そのような場合、世界ランクは過去1年間の成績の平均を表していることになります。
すでに説明したように、一発勝負の大会では、その結果は時の運みたいなところが多分にあります。
しかし、過去1年間の成績を平均した世界ランクにおいては、運が良かったときと悪かったときをある程度打ち消し合って、そのアスリートやチームの真の実力を反映したものになりやすいはずです。
今回の東京オリンピック開幕前に「メダル候補」として注目されていたアスリートやチームの多くは、この世界ランクが上位だったはずです。
しかし、オリンピックに限らず一発勝負の大会では、世界ランクどおりの結果がでるとは限りません。
世界ランクはあくまでも過去1年の成績の平均なわけなので。
たとえば、世界ランク5位の選手は、毎回5位という結果を残しているわけではなく、ときには1位になったり、ときには20位になったりして、それらを平均すると5位というだけのことなので。
それにもかかわらず、世界ランクとは異なる結果になったときに、「オリンピックには魔物がいる」という表現が使われることがあります。
しかし、オリンピックに限らず、1つ1つの大会だけを見ると、世界ランク上位者が負けることだって普通にあります。
世界ランクは過去1年の複数の大会での成績の平均にすぎないわけですから。
オリンピックだけが特別なわけではありません。
ある意味、「すべての大会に魔物がいる」わけです。
だから、メダルが期待されながら獲得できなかったアスリートやチームについて、その原因を解説するような記事を目にすると、すごい憤りを感じるんです。
結果が出た後だったら、なんとでも言えるよ、って。
私が関わっているアスリートやチームが言及されている場合ではなくても、第三者としてそのような記事を読むと、ムッとしちゃうんですよね。
そんなの後出しジャンケンじゃないですか。
どうせなんか言うんだったら、オリンピック前に言っておけよ、と思うんです。
アスリート自身やコーチ、その他スタッフが、勝てなかった理由を探り、そこから学んだことを今後に活かすのであれば問題ありません。
「勝負は紙一重で時の運だ」というのを理解した上で、それ以外に負けた理由がないかどうかを探すのはむしろやるべきことだと思います。
しかし、内部事情を知らない外野の人間が後出しジャンケンでごちゃごちゃ解説するのはいただけません。
まとめ
私自身、本ブログで、2014年サッカーブラジルW杯において日本代表が期待されたような成績を出せなかった理由の1つとして、直前のコンディション調整の失敗の可能性を指摘したことがあります。
» 参考:サッカーW杯直前の準備期間におけるコンディション調整の不備について改めて考えてみる
ただし、これは後出しジャンケンではなく、W杯が始まる前に、メディアで報道されていたコンディション調整のやり方について、すでに疑問を呈していました。
このような形であれば、卑怯ではないと個人的には思います。
しかし、完全に後出しジャンケンで、結果が出なかったアスリートやチームに対して、外野からあーだこーだいう専門家を私は信用できません。
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【編集後記】
新型コロナのワクチン接種2回目が終わり、副反応に苦しんでいます。
接種翌日は熱・寒気・倦怠感。
2-3日後はだいぶ調子良くなりましたが、頭痛が続いています。
それでも、新型コロナに感染して症状が悪化するのと比べればどうってことないと思うので、ワクチンを打ったことをまったく後悔はしていません。
家族の中では私が外出する機会が圧倒的に多い=新型コロナに感染して家庭に持ち込んで家族にうつしてしまうリスクが1番高いので、まずは私がいち早くワクチンを2回接種できてよかったです。
私が打ったモデルナは十分な免疫ができるのは2回目接種から14日後ということなので、まだそこには至っていませんが、今後もこれまでと変わらず、手洗い・マスク・三密回避等の基本的な対策は継続していこうと思います。