先日、以下のようなツイートをしました:
アスリートの体力測定について
「たくさんデータをとっていけば見えてくるものがある」
みたいな主張をしている人を見るとムズムズする。
根拠がないけどとりあえず試しに測定やらせてるってことでしょ?
「アスリートをあなたの実験台にするな!」と言いたい。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
体力測定やるのに時間も労力も使うわけで、そのぶん練習やトレーニングに費やせる時間や労力が減ることになる。
それでもやる価値がある・メリットがある、と自信を持って説明できるならやればいい。
そうじゃないなら、ただなんとなくデータとるためだけに体力測定をやるのは無責任なだけ。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
これらのツイートを読むと、一見、私が体力測定をやることに反対しているかのような印象を持たれるかもしれません。
そして「え、なんで体力測定しちゃダメなの!?」と違和感を持たれた読者も一部いるでしょう。
今日のブログは、そんな感想を持たれた方にこそ読んでいただきたい内容です。
良かれと思ってやっていることが、実はアスリートにとって不利益になっているかもしれませんよ?
体力測定をしたほうがいいのか・しないほうがいいのかは「場合による」
まずハッキリさせておきたいのは、私は体力測定全般を否定しているわけではない、ということです。
「体力測定をしたほうがいいのか・しないほうがいいのか」という議論は、「正義か悪か」みたいに二元論で語れるものではありません。
したほうがいい場合もあるし、しないほうがいい場合もあります。
ようするに「場合による」というのが正しい考え方です。
では、なぜ、体力測定をしたほうがいいのか・しないほうがいいのかは「場合による」のでしょうか?
それは、体力測定を実施することには、メリットだけでなくデメリットもあるからです。
メリットがデメリットを上回る場合は体力測定をしたほうがいいでしょうし、デメリットがメリットを上回る場合は体力測定をしないほうがいいでしょう。
体力測定を実施することで生じるメリットとデメリット、どちらが上回るかは「場合による」ので、結果として、体力測定をしたほうがいいのか・しないほうがいいのかも「場合による」のです。
問題なのは「体力測定を実施することでデメリットも生じうる」という視点が欠落している専門家がいることです。
この視点がないと、「体力測定をすることは常に正義であり、アスリートの利益につながる」という誤った考えを持ってしまい危険です。
そのような専門家たちが、「たくさんデータをとっていけば見えてくるものがある」みたいな主張をして、不必要な体力測定を過剰に実施してアスリートに不利益を与えてしまっていることに警鐘を鳴らすつもりで発信したのが、冒頭で紹介したツイートです。
専門家が体力測定についての知識や考え方を磨くことが大切
体力測定を過剰にやってしまっている専門家は、アスリートに不利益を与えようと思ってやっているわけではないでしょう。
むしろ、アスリートのために良かれと思って善意でやっている方がほとんどのはずです(少なくとも私はそうであると信じたいです)。
しかし、悪気はないのに無意識のうちに迷惑をかけてしまっている専門家は、逆にたちが悪いです。
アスリートや競技コーチからすると、「あの人はたくさん体力測定をしてくれて、自分たちのために一生懸命やってくれている」という印象を持つかもしれません。
あるいは、仮にアスリートや競技コーチが「こんなにたくさん体力測定をして意味あるのかな・・・」という疑念を抱いたとしても、善意でやってくれている人に対して正面から不満を言うのは難しいでしょう。
だからこそ、善意でやっているからOKということではなく、専門家として誤ったことをやって不利益を与えてしまうようでは、ダメなんです。
本当にアスリートのためを思って、専門家として良いサービスを提供して貢献したいという想いを持っているのであれば、自分の知識やスキルを磨くことに真剣に取り組むべきです。
とくに、1つ1つの体力測定の方法に習熟するということではなく(もちろんそれも重要ですが)、体力測定についての大きな枠組みでの「考え方」をしっかりと理解することが、無駄なOR不利益を与えてしまうような体力測定をしてしまうことを防ぐことに繋がります。
まずは、「体力測定を実施することでデメリットも生じうる」ということを認識することから始めましょう。
そして、具体的にどのようなデメリットが生じうるのかも理解していくことが大切です。
そうすれば、「たくさんデータをとっていけば見えてくるものがある」みたいなことを言って、不必要な体力測定を過剰に実施させることがいかに罪なことなのか、理解できるはずです。
そして、それが理解できていれば、そもそも無駄にたくさんの体力測定をやらせることはなくなるでしょう。
体力測定を実施することで生じうるデメリット
じゃあ、体力測定を実施することで生じうる具体的なデメリットは何なんだ?
というのがここまで読んでいただいた方が思われることでしょう。
その答えは、冒頭で紹介した2つ目のツイートにすでに書いてあります。
「体力測定やるのに時間も労力も使うわけで、そのぶん練習やトレーニングに費やせる時間や労力が減ることになる」
これです。
「なんだ、そんなことか」と思われた読者もいるかもしれません。
しかし、練習やトレーニングができなくなるOR量が減る、っていうのは、皆さんが想像されるよりも遥かに大きなデメリットである、と私は思います。
だって、体力測定だけをしていても技術や体力は向上しないんですから。
体力測定を実施することのメリット・デメリットについては、以下の書籍の第15章「テストとモニタリング」を読まれることをオススメします。
体力測定を実施するすべてのS&Cコーチが認識しておくべきことについて、よくまとめられています。
まとめ
「たくさんデータをとっていけば見えてくるものがある」みたいな主張をして、とりあえず体力測定をやっている専門家は、「体力測定にはメリットしかない」「体力測定をすることは常に正義であり、アスリートの利益につながる」と思い込んでいるふしがあります。
実際には、体力測定を実施することで発生するデメリットは確実に存在します。
それを認識したうえで、メリット・デメリットを秤にかけて、後者が上回る場合にはあえて体力測定をやらないという選択ができる専門家を目指したいものです。
悪気はないのに無意識のうちに迷惑をかけてしまうたちの悪い専門家に自分がなってしまっていないか、立ち止まって確認してみましょう。
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【編集後記】
iPhoneを機種変更しました。
今までずーっと色はホワイトだったのですが、今回はブラックにしてみました。
暗い場所だとどちらが表か裏かわかりづらく、裏面をタップしてしまうことがしばしばです。
あるあるでしょうか?