9/30(日) S&Cコーチとして押さえておきたい考え方セミナー

#37 【論文レビュー】アクチベーションドリル その2


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前回のブログでアクチベーションドリルに関する研究をレビューして、「適切なエクササイズを選択して、かつターゲットとする筋群を意識してアクチベーションドリルを実施すれば、ターゲットとする筋群を動員することが可能である」という一応の結論に到達しました。今回は、アクチベーションドリルを実施する事で、その後の動作の中でターゲットとする筋群がより動員されるようになるのかに関して、文献をレビューしたいと思います。

 

アクチベーションドリル研究紹介

2. アクチベーションドリルをした後の運動中に、ターゲットとする筋群がより動員されるようになるのか?

S&Cコーチとして興味のあるアクチベーションドリルの効用の1つとしては、ウエイトトレーニング前のウォームアップ中にアクチベーションドリルを実施する事で、その後のスクワットやデッドリフト等のエクササイズ実施中に、ターゲットとなる筋群(例:大殿筋、体幹の筋群)をより動員できるようになるのかといった事があります。

私が調べた限りでは、この点での研究はあまりなされていないのが現状です。唯一、見つけたのはTsaoら[1]の研究です。

この研究では、腹横筋をターゲットとするアクチベーションドリル(いわゆる「ドローイン」と呼ばれる、仰向けで寝た状態でお腹を凹ませるエクササイズ)を実施する事で、その後の運動中(立位姿勢で腕を前後に素早く振る[肩関節の屈曲・伸展]動作)における腹横筋の筋活動の大きさとタイミングに変化があるかどうかが筋電図を用いて調べられました。結論としては、ドローインを実施した後では、肩関節の屈曲・伸展動作中に腹横筋の発火のタイミングが早くなり、さらに腹横筋の筋活動レベルが動作初期で大きくなるという事が発見されました。

つまり、ある筋群をターゲットとするアクチベーションドリルを実施する事で、その後に実施する運動中においてその筋群の動員(発火のタイミングと筋活動レベルの大きさ)を変化させる事ができるという事が示唆されたと言えます。この結論が、他の筋群をターゲットとしたアクチベーションドリルにも当てはまるとは限りませんが、まあ興味深い研究結果だと思います。

この研究で報告されているもうひとつ興味深い発見は、ドローインエクササイズの質と肩関節屈曲・伸展動作中の腹横筋発火タイミングの変化率の間に相関関係が認められた事です。ここで言うエクササイズの質は、筋電図や超音波画像を用いて、ドローインエクササイズ中に腹横筋をisolateして動員できているかどうかを10段階でランク付けしたものです。つまり、アクチベーションドリルをより効果的に実施できた(つまりターゲット筋群をよりisolateして動員できた)場合は、その後の運動中にターゲット筋群の動員に与える影響が大きくなるという事です。 

 

まとめ

今回レビューした研究から示唆される事を改めてまとめると:

  • アクチベーションドリルを実施した後では、ターゲット筋群を動員する能力に変化が起きる(発火のタイミングと筋活動レベルの大きさが変化する)
  • アクチベーションドリルの質が、その後の運動中にターゲット筋群を動員する能力の変化率に影響を与える

という感じでしょうか。

前回のブログでレビューした研究により、「アクチベーションドリルを用いればターゲットとする筋群を動員する事が可能である」という事が示唆されました。そして、今回のブログでレビューした研究により、「アクチベーションドリルを実施した後に他の動作を実施すると、ターゲットとする筋群をより早くまたはより強く動員する事が可能になる」という事が示唆されました。残る疑問としては「アクチベーションドリルを用いて、その後の動作中にターゲットとする筋群の動員を変化させる事で、動作のパフォーマンスそのものが向上するのか?」という事があります。アクチベーションドリルを実施してターゲットとする筋群をより動員できるようになっても、それがパフォーマンスの向上に繋がらなければ意味がないので、この最後の質問は重要です。次回のブログで、この質問に関する研究をレビューしたいと思います。

 

参考文献

[1] Tsao H and Hodges PW. Immediate changes in feedforward postural adjustments following voluntary motor training. Exp Brain Res. 2007;181(4):537-46.