#366 「研究よりも現場のほうが何年も進んでいる!」ってホント?


 

Scientist and microscope

 

現場での活動にプライドを持っているS&Cコーチの中には、スポーツ科学者を見下して「研究よりも現場のほうが何年も進んでいる。研究は現場でやっていることを後追いしているだけ!」という考え方をお持ちの方もいらっしゃるようです。

確かに現場のことを一切わかっていないスポーツ科学者が一部いるのは事実です。また、スポーツ科学の研究の多くはすでに現場でやられていることの効果を検証するものなので、ある意味「後追い」であることは否定できません。

しかし、だからと言って、現場での経験だけに頼って、科学的知見を全否定するのはちょっと違うんじゃない?と思うのです。

 

 

科学的知見を否定して経験だけに頼る人を批判したくなる理由

①研究によって、現場でやられていることが「効果がないor逆効果」と判明することがある

たしかに、現場で活動しているS&Cコーチのほうが、目の前の課題を解決するために色々と工夫をしていて、新しいエクササイズやトレーニング方法を開発しているのは事実です。そして、後の研究によって、それらのエクササイズやトレーニング方法が「効果がある」と確認されることがあるのも事実です。ある意味、研究は現場の「後追い」です。

その一方で、後追いの研究によって、「効果がある」と確認されるのと同じくらい、「効果がないor逆効果である」と確認されるものもあるんです。現場の経験が100%正しいわけはないので、間違うことだってあります。そんなの当然です。だから、それ自体を批判するつもりはありません。

しかし、「現場の経験のほうが何年も進んでいるんだから、研究者の言うことに耳を傾ける必要なんてないよ!」という態度のS&Cコーチがいたら、それは批判したくなります。スポーツ科学を軽視して、科学的知見を知ろうとしないと、「効果がないor逆効果である」と判明していることをやり続けてアスリートの不利益に繋がることもあるわけですから。

 

②「科学的知見に頼っているようではダメだ!」とか言う人に限って、研究をした経験がない

これは私の勝手な決めつけかもしれませんが、科学的知見を否定する現場主義者の人たちは、自身で研究をした経験がないと思われます。

大学院で研究をして博士号まで取得し、現場でもアスリートのトレーニング指導をしている私が断言しますが、たしかに科学的知見を実際のトレーニングに活かすことには限界があります。

ただし、自身で研究をしたこともないのに、科学的知見の限界なんてわかるはずがありません!わからないのに変なこと言わないほうがいいし(恥かきますよ・・・)、なんだったら大学院に行って自身で研究をしてみて、研究の限界を見きわめたうえでそういう発言をされたらいかがでしょうか?

 

 

まとめ

現場で活動しているS&Cコーチのほうが、目の前の現実的な課題を解決するために工夫が求められるのは間違いありません。研究はそれらの工夫を後追いで確認する作業が大半であることもまた事実です。そして、トレーニング指導の現実を知っていて、現場で使えるような実践的な研究をしているスポーツ科学者が少ないのも否定できません。

でも、だからと言って「研究よりも現場のほうが何年も進んでいる」という意識で研究者を見下し、科学的知見を取り入れる努力をしないと、アスリートに最高のサービスを提供するのは不可能です。

現場での経験を大切にして創意工夫することと、科学的知見を活用することは、二者択一の話ではありません。両者をうまく組み合わせることは十分可能ですし、うまく組み合わせることがS&Cコーチには求められているのだと思います。

 

 

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【編集後記】

 ピコ太郎のペンパイナップルアップルペンが流行っていますが、それのインド版が面白いです。完全にハマってしまいました!頭から離れません・・・。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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