#399 なぜ自主開催セミナーの1発目に「考え方」というテーマを選んだのか?【後編】

 

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前回の続きです。

 

 

なぜ「考え方」を押さえておく必要があるのか?

私は以前から、S&Cコーチとして、エクササイズ指導やプログラムデザインといった「スキル」も重要だけど、それ以前に「考え方」のほうが重要だと、なんとなく思っていました。

#297 エクササイズ指導やプログラムデザインといったスキルも重要だけど、考え方も重要

 

しかし、なぜ「考え方」のほうが重要なのか、ということを明確に説明できる理論を持っていませんでした。そんな中、二冊の本に出会って、「あ、考え方のほうが重要っていうのはこういうことなのかな?」と思考が少し整理されるような経験をしました。

 

①WHYから始めよ!ーインスパイア型リーダーはここが違う

この本では「ゴールデンサークル」と呼ばれるフレームワークが紹介されています。このフレームワークはそもそも企業のリーダーが人々を鼓舞させるためのものですが、S&Cコーチにとって必要なものを理解するうえでも役立ちます。

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簡単に説明すると、優れたリーダーや企業は円の中心である「WHY」から考え始めて、徐々に外側に向かって「HOW」「WHAT」という順番で物事を考える、ということです。逆に言うと、多くの人は円の外側の「WHAT」を先に考えるという間違いをおかしています。

S&Cコーチに当てはめてみると、「WHY」にあたるのは基本的な「考え方」です。まずはここを押さえておかないと、的外れな「HOW」とか「WHAT」を選択するリスクが高まります。

たとえば、スクワットのやり方を指導するというのはスキルです。ゴールデンサークルでいうと「WHAT」にあたります。しかし、一言でスクワットと言っても、いろいろなやり方があります。ウエイトリフターがやるスクワット、パワーリフターがやるスクワット、ボディビルダーがやるスクワット等々、どれもスクワットですが、深さ・上体前傾角度・スピードやテンポ等が異なります。

で、S&Cコーチがアスリートにスクワットをやらせる時に、どのようなタイプのスクワットが適切なのかを判断しようと思ったら、まずは「WHY」の部分、つまり「そもそも、なぜアスリートにスクワットをやらせるのか?」という根本的な部分を突き詰めて考えておかないといけません。「WHY」が決まらないと適切な「WHAT」も定まらないのです。

それなのに、「WHY」が無い状態で「WHAT」にあたるスキルを向上させようとして、たとえばパワーリフターが主催している「スクワット指導法セミナー」みたいなのに参加して一生懸命勉強しても、それがアスリートの競技力向上に結びつかないケースがあるのです。そのようなセミナーで学べるのは、パワーリフティング競技でスクワットをできるだけ重い重量を挙げられるテクニックだからです。ベクトルがズレているのです。

参考ブログ #292 できるだけ重い重量を挙げるためのフォーム vs. できるだけ健康的に効率よくトレーニング効果を上げるためのフォーム

 

誤解を招かないように付け加えておくと、S&Cコーチがパワーリフターの教えるスクワットセミナーに参加することを否定しているわけではありません。「WHY」にあたる考え方がしっかりと固まっているのであれば、パワーリフターの教えるスクワットセミナーに参加しても、その中から、アスリートの競技力向上に役立つ情報だけをピックアップして取り入れることができるはずです。

「WHY」がしっかりしていれば、S&Cコーチはパワーリフターからも、ウエイトリフターからも、ボディビルダーからも、有用な情報やスキルを学ぶことができるのです。

 

したがって、まずは「WHY=考え方」を押さえておけば、自らのスキルアップにおいて間違った方向にお金・時間・エネルギーを浪費することもなくなるし、トレーニング指導においても、目の前のアスリートにとって本当に必要なものを提供することができるようになるのです。

優先順位として「WHY」のほうが「HOW」や「WHAT」よりも先なんだ、という点を理解できると、私がなんとなく思っていた「考え方」の重要性についても頭が整理される気がしました。

 

 

②世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう

この本では「戦略の階層」という考え方が紹介されています。もともとは戦争において相手に勝つための戦略を、階層に分けて分類するという概念です。

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たとえば最下層の「技術」は兵士の熟練度や戦車の保有台数などがあたります。その上の「戦術」はチームとしてバトルするために、持っている戦車等をいかにコントロールしてオーガナイズして戦うかということになります。さらに上の階層に行くと、もっと大きな視点で、全軍で戦争に勝つ方法を、燃料や食料等の補給といった後方支援も含めて大きな視点で考えていく「戦略」という階層になっていきます。

で、一言でいうと上の階層のほうが優先度が高いですよということです。たとえば、自衛隊がどれだけ最先端の武器を揃えたとしても、ひとりひとりの自衛隊員がどれだけ優秀であったとしても、「敵から先制攻撃を受けてからじゃないと反撃できない」という法律があると勝てるものも勝てないはずです。これは法律という上の階層の部分がしっかりしていないため、どれだけ下の階層の技術を磨いても意味がなくなってしまうことを示唆しています。

 

この「戦略の階層」という考え方をS&Cに当てはめてみると、たとえばスクワットの指導方法といったスキルは最下層の「技術」にあたります。で、S&Cコーチとしての基本的な考え方はもっと上の階層の「戦略」にあたります。

このように、S&Cコーチにとっての「考え方」と「スキル」をピラミッド形式の階層として捉えて、「考え方」のほうが上の階層にあたるんだ、と把握できると、抽象的で目に見えない「考え方」というものがS&Cコーチにとって優先度が高いことが理解しやすいはずです。

 

 

まとめ

ご紹介した「ゴールデンサークル」と「戦略の階層」というコンセプトをS&Cにあてはめてみると、S&Cコーチにとって「考え方」がいかに重要かがなんとなくわかりやすくなるのではないでしょうか?

ちなみに、「WHAT」や「技術」にあたるスキル(例:スクワットの指導法)を磨くことを軽視しているわけではありません。どれだけ「考え方」がしっかりしていても、それを実行に移す時にスキルの質が低ければ、思い描いていた目的を達成することが困難になります。したがって、重要度の高い・低いのお話というよりは、優先度の先・後のお話であるとご理解ください。

そして、今回と前回お話したS&Cコーチとしての「考え方」について、さらに詳しく知りたい方は、是非、5/21のセミナーにお申し込みください。まだ定員には余裕がございます。

5/21セミナー「S&Cコーチとして押さえておきたい考え方」 ※受付修了しました。

 

 

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【編集後記】

フリーランスS&Cコーチという仕事柄、ジャージ系のラクチンな服装が多くなりがちです。私は汗っかきなので、真夏にスーツを着ないでいいというのは、この職業のメリットの1つです。でも、たまにはスマートカジュアル的なファッションをするのもいいですね。いつもの服装と違うので、気分的にはコスプレをしている感じです。でも、周りからみたら普通のサラリーマンがクールビズの格好をしている程度なので変な目で見られることもありません。