#651 【アスリート向け】トレーニングにおいては、足し算よりも引き算が重要(だけど難しい)

 

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新しく覚えたエクササイズはどんどん足したくなる

トレーニングに対して意識の高いアスリートだったら、新しいエクササイズ等を教えてもらったら、試してみたくなるはずです。

そして、やってみて良さそうだったら、日々のルーティンにも加えたくなるでしょう。

これまでやっていなかったけど自分に役立ちそうなものを、常に追い求めながら取り入れていこうとする姿勢は素晴らしいです。

ある意味、向上心がある証拠です。

アスリートとして上を目指すためには、必要な特性だとも言えるでしょう。

 

その一方で、「あ、これ良いな!」「お、これも良さそうだ!」という感じで、どんどん取り入れるものが増えていくと、日々やらないといけないルーティンが膨れ上がってしまいます。

私が担当してきたアスリートの中にも、トレーニングに対して真摯に向き合ってきた真面目なベテラン選手なんかは、「お前、どんだけやるんだよ!」とツッコミをいれるくらい多くのルーティンをこなしていました。

ベテランで経験が長いぶん、さまざまなところで、さまざまな専門家から、いろいろなエクササイズ等を教えてもらってきたのでしょう。

そうした経験のなかで、自らが「これは良い」と思って取り入れてきたエクササイズ等をこなすことで、安心する気持ちがあるのかもしれません。

そして、それらをやめてしまうことが不安なのかもしれません。

 

気持ちはとてもわかります。

でも、良いと思われるものをどんどん増やしていっても、増やしすぎてしまうとトレーニング効果は逆に低下してしまいます。

たとえ、ひとつひとつのエクササイズ等は確かに効果のあるものであったとしても、です。

トレーニングにおいては、やればやるほど効果が上がるというわけではないんです。やりすぎは逆効果なのです。

 

 

やればやるほど効果が上がるわけではないことを示唆した研究

たとえば、「German Volume Training(GVT)」と呼ばれるウエイトトレーニングのやり方があります。

これは、「10セット×10レップ」というかなりの量をこなすやり方です。

めちゃくちゃ量が多くてキツいやり方ですが、一部のトレーニング関係者の間では、プラトーを脱するために効果があるやり方であると考えられてきました。

 

しかし、2017年に発表された論文によると、GVTによる筋力向上効果は、その半分の量(5セット×10レップ)のやり方よりも低かったと報告されています(下図参照)。

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この図では、週3回で6週間トレーニングをしたときの、3つのエクササイズにおける筋力(1RM)の伸び率を%で示してあります。

ご覧いただくとわかるように、10セットやるGVTよりも、その半分の5セットしかやらないHalf GVTのほうが、筋力の伸び率が大きいという結果でした。

実際の結果は状況によっても変わりうるものですが、少なくとも、トレーニングにおいては「やればやるほど効果が上がるわけではない」ということを示した1つのデータとして捉えることができます。

 

 

やりすぎが逆効果に繋がりうる理由

上で紹介した研究では、同じエクササイズを5セットやった場合と10セットやった場合で比較しています。

それは、今日のブログで議論しているような、新しくおぼえたエクササイズをどんどん足していく状況、つまり、セット数ではなくエクササイズ数を増やす状況とはまったく一緒ではありません。

とはいえ、それでも、やりすぎはNGという考え方においては共通しています。

 

では、トレーニングにおいてやりすぎが逆効果に繋がりうる理由とは何でしょうか?

  • ①疲労が溜まりすぎる
  • ②ペース配分をしてしまい、1つ1つのエクササイズで全力を出しきれない
  • ③トレーニングへの適応に使えるエネルギーには限りがある

 

①疲労が溜まりすぎる

まず単純に、どんどんエクササイズを足していって膨大な数になってしまうと、それをこなすだけで疲れます。

トレーニングをすれば多少は疲れが溜まるものですが、やりすぎてしまうと、その疲れが溜まりすぎてしまいます。

過剰に疲れが溜まった状態では、トレーニング効果にもマイナスだし、ケガをしやすくなるし、練習や試合でのパフォーマンスの低下にも繋がってしまいます。

 

②ペース配分をしてしまい、1つ1つのエクササイズで全力を出しきれない

たとえば、今日のトレーニングは1時間で5つのエクササイズだけを実施するということが事前にわかっていれば、その5つのエクササイズに全力で取り組むことができるでしょう。

しかし、最初の1時間でまったく同じ5つのエクササイズを実施した後に、さらに1~2時間かけてプラス15個のエクササイズをこなさないといけない、となったらどうでしょうか?

最初の5つのエクササイズがまったく同じだったとしても、後者の場合は、その後に控えているトレーニングもこなせるように無意識にペース配分してしまい、最初の5つのエクササイズで全力を出し切ることができないはずです。

たとえば、挙げる重量を少し減らしてしまう可能性が考えられます。エネルギーを残しておこうとして。

それはほんの少しの差かもしれませんが、それが積み重なっていけば、大きなトレーニング効果の差に繋がることでしょう。

 

③トレーニングへの適応に使えるエネルギーには限りがある

トレーニングを実施して身体に刺激を与えると、それに対して「適応」が起こります。

筋肉が太くなるとか、骨が強くなるとか。

で、この適応にもエネルギーが必要で、そこに使えるエネルギーにも限りがあるはずです。

したがって、エクササイズ数を増やしすぎてしまうと、1つ1つのエクササイズが身体に与える刺激に対する適応に使えるエネルギーが減ってしまう・薄まってしまいます。

たとえば、適応に使えるエネルギーが「100」あったとして、5つのエクササイズを実施したら、1つあたり20のエネルギーを適応に使えるけど、20個のエクササイズを実施したら、1つあたり5のエネルギーしか適応に使えない、みたいなイメージです。

※実際はこんな単純な話ではありませんが、私の言わんとするところをイメージしてもらうにはわかりやすい例え話だと思います。

 

 

まとめ

真面目なアスリートほど、どんどんエクササイズを足したがりますが、残念ながら逆効果です。

むしろ、トレーニングにおいては、足し算よりも引き算が重要です。

いかに減らしていって、本当に重要なもの、そして、効率のよいものだけを残せるかが、トレーニング効果を最大限にするための鍵となります。

それは、トレーニング指導の専門家であっても、なかなか難しくてできないことではありますが、絶対にやったほうがいいです。

必要なら専門家に相談して、どれを減らしてどれを残すか、検討する機会を設けてみてください。

 

 

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【編集後記】

山ちゃんの結婚はビックリした・・・。