「方向転換」に関して、先日、以下のようなツイートをしました。
スプリント中に180°のような鋭角な方向転換をする時は、方向転換の一歩手前のステップが重要。パフォーマンスと障害予防の両方の観点で。
Role of the Penultimate Foot Contact During Change of Direction
Implications on Performance and Risk of Injury https://t.co/3RbWn5JHWv— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
まっすぐスプリントをしている状態から素早く方向転換する能力は、多くのスポーツで必要なものです。
とくに、180°のような鋭角の方向転換をするときは、いかに素早く減速をして、その後、いかに素早く再加速できるか、が鍵になります。
今日は、そんな方向転換における「切り返しの一歩手前の脚」の重要性について紹介します。
方向転換における切り返しの一歩手前の脚
上記のツイートでは、「Strength and Conditioning Journal」という雑誌に掲載された記事を紹介しました:
タイトルにもある「Penultimate 」という単語に「切り返しの一歩手前の」といった意味合いがあります。
たとえば、まっすぐスプリントしている状態から、右向きにターンして180°方向転換するような場合は
- 右脚 → 切り返しの一歩手前の脚(Penultimate)
- 左脚 → 切り返し脚
ということになります。
切り返しの一歩手前の脚の重要性
なんとなく感覚的に考えると、方向転換のときはできるだけ少ない歩数で減速したほうが速くなりそうな気がします。
つまり、方向転換の直前まで全力で走っておいて、切り返し脚の一歩だけでドカンと減速をして、方向転換することができれば理想なんじゃないかということです。
でも、これは難しいです。ほぼ不可能に近いです。
ジョギング程度の低いスピードで走っている状態から方向転換するのであれば、まだ可能性としてはありえます。
しかし、全力に近いスピードで走っている状態から切り返し脚の一歩だけでドカンと減速するのは、ほぼ不可能ですし、危険です。
上記の記事でも、切り返し脚だけで無理に減速しようとすると、膝への負担が増えて、前十字靭帯損傷のリスクが高まると指摘されています。
また、ケガのリスクという観点だけでなく、パフォーマンスという観点でも、切り返し脚の一歩だけでドカンと減速するのは現実的ではありません。
その一歩手前の脚を効果的に使って減速をすることが鍵になります。
上記の記事によると、切り返しの一歩手前の脚が床に対して発揮する力(とくに水平方向の減速成分)が重要であると、過去の研究によっても示唆されているとのことです。
少なくとも180°のような鋭角の方向転換においては。
実際に、方向転換や切り返しが上手なトップアスリートの動きを観察していると、切り返しの一歩手前の脚を上手に活用していることがわかります。
— 奥村正樹(スポーツトレーナー/physiotherapist) (@Masa19901)
長友選手のこの切り返しでは、右脚がいわゆるPenultimate脚です。
スピードが速い+ジャンプからの着地ということもあり、Penultimate脚を2回使って減速していますが、最終的な切り返し脚の左脚よりも、Penultimate脚である右脚のほうが減速の役割が大きいのがわかると思います。
Federer Feet
*Listen to the audible sound the rapid ground contacts create buffering speed while stacking joints & creating the timing of his approach after assessing ball flight dynamics @bballbreakdown pic.twitter.com/pCbuCZMzq2— BBiomechanics (@BBiomechanics)
フェデラー選手の場合、まっすぐスプリントからの方向転換とは多少異なりますが、減速という意味では、Penultimate脚である左脚を上手に使っているのがわかります。
Pure COD adds a stimulus unlike many others. The large eccentric breaking component of a high intensity 180° cut creates a huge mechanical load – great for building highly specific strength and power. THIS is ‘sport specific strength’. pic.twitter.com/yM524yb1Xk
— Nathan Kiely (@nathankiely1992)
こちらでは、方向転換が上手なアスリートと下手なアスリートが観察できます。
上手なアスリートは、やはりPenultimate脚をうまく使って減速→再加速できています。
まとめ
180°のような鋭角の方向転換、とくに速いスピードからの減速→再加速をする場合には、切り返し脚の一歩手前の脚(Penultimate脚)が重要なんだと知っていただければ。
じゃあ具体的に、Penultimate脚をどのように使いこなせばいいのかについては、ブログ記事だけでは解説が難しいのでやめておきます。
私は個人的に、朝倉全紀さんが代表を務められているSchool of Movementにおいて、「Movement Fundamentals」「Certified Movement Coach」というコースを受講して、方向転換についての理解を深めることができました。
そこでは、Penultimate脚は「Front Leg」と呼ばれており、その必要性や具体的な使い方を習うこともできました。
興味のある方は、ぜひ受講されることをオススメします。
#330 「ムーブメントファンダメンタルズ」を受講した感想
※ちなみに、「切り返し脚」がまったく重要でないと主張しているわけではありません。あくまでも、その一歩手前の脚の重要性に気づいてあげましょうという主旨です。
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【編集後記】
RSSリーダーとして使っている「inoreader」。
無料プランが変更されて、機能に制限がかかることになりました。
とくに登録できるサイトの件数の上限が150件までとなりました。
うーん、どうしよう。