#765 提供する内容を減らすことで届ける価値を高めることもできる

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昨日、「非持久系競技のためのHIITセミナー」を実施しました。

このセミナーは、もともと2015年にNSCAの地域ディレクターセミナーで初めて実施したものです。

その後、2017年に独立をしてセミナー自主開催を初めてからも、内容を少しずつアップデートしながら、何度か同テーマでセミナーを開催してきました。

そして、今回、2020年に入り、かなり大幅に内容を改変してみました。

結果として、この改変は大成功だったな〜と感じているので、そのあたりの話をしたいと思います。

 

 

セミナーの内容を大幅に改変した経験

HIITは「high intensity interval training」の略であり、日本語だと「高強度インターバルトレーニング」のことです。

このテーマについては、まだまだ科学的にも未解明の部分が多く、日々、新しい論文が発表されて、科学的知見がどんどんアップデートされています。

それに合わせて、より最新の研究結果を盛り込もうと、セミナーの内容(例:スライド)も少しずつアップデートしていました。

 

もともと、このセミナーの時間は4時間と設定していたのですが、最新の科学的知見をどんどん足していくと、だんだんスライド数も増えてきて、4時間では話し切れない状況に陥りつつありました。

そこで、1つの選択肢としては、セミナーの時間を5時間に伸ばす、というものが考えられました。

しかし、どんどん新しい科学的知見を足していくと、次は6時間、その次は7時間、という感じで、どんどんセミナーの時間を延長していくことになり、キリがありません。

つまり、最新の研究結果をどんどん足していくというやり方は、もはや持続可能なアプローチではなくなったのです。

 

立ち止まって考えてみると、「HIITに関する最新の科学的知見をすべて漏らさずにセミナーに盛り込んで欲しい」なんてセミナー参加者は望んでいるのだろうか?という疑問が浮かんできました。

もしかしたら「俺はHIITに関する最新の科学的知見に精通しているぜ、どうだ凄いだろ!」と私が自慢したかっただけなのではないか、私のエゴなのではないか、と思うようになりました。

実際、過去のセミナーを振り返ってみると、かなり科学的な難しい内容の解説に時間を使いすぎていたかもしれません。

そして、その割には、参加者の皆さんにはうまく伝わっていなかったのではないか、とも感じます。

 

そこで、2020年に入り、HIITセミナーの内容を大幅にアップデートすることにしました。

具体的には、難解な科学的な解説をバッサリとカットし、わかりやすさや伝わりやすさを重視してスライドを作り直しました。

HIITに関するすべての科学的知見を網羅して伝えることはやめて、本当に大切な幹の部分だけをわかりやすく伝えることにフォーカスすることにしたのです。

 

時間をかけて論文を読んで作り込んだスライドをバッサリとカットすることは、かなりつらい作業でした。

もったいないな〜、とも思いました。

でも、やらないといけないことでした。

「私がどれだけHIITの科学的知見に精通しているのかを見せつける」みたいな誤った方向に進んでいたものを、正しい方向に戻すためには痛みが伴うものだと自分に言い聞かせました。

そして、その正しい方向とは「セミナー参加者にとって有益で使える価値を、わかりやすくお届けする」ということです。

 

この大幅な改変作業をやってみて、個人的には大正解だったと感じています。

ごちゃごちゃとした難解な内容はなくなり(一部はまだ理解が難しい部分もありますが)、だいぶスッキリとして伝わりやすい内容になったと思います。

以前に同じテーマのセミナーにご参加いただいた方が昨日のセミナーに参加してくれて、「以前よりわかりやすかった」というポジティブなフィードバックをくれたので、内容を大幅に変更して良かったな〜と確信を持つことができました。

 

 

提供する内容を減らすことで届ける価値を高めることもできる

今回の出来事から学んだ教訓は、今日のブログ記事のタイトルでもある「提供する内容を減らすことで届ける価値を高めることもできる」ということです。

実際に、非持久系競技のためのHIITセミナーの内容を見直す段階で、以前は時間をかけて解説していた部分をバッサリと切りました。

内容を大幅に減らしたのです。

 

内心は「こんなに減らしちゃって大丈夫かな」と不安もあったのですが、結果としては、より伝わりやすいものができあがり、逆に届ける価値が高まったと感じています。

これは私が勝手に感じているだけなので、実際のところは参加者の皆さんに聞いてみるしかないところです。

幸いにも、セミナー後は参加者の皆さんにアンケート調査へのご協力をお願いしており、そのフィードバックを見る限りでは、以前よりも良い反応をいただいていると感じます。

 

自分が知っていることをとにかくすべて余すことなく伝えたい、という気持ちは本能的に誰しもがお持ちでしょう。

しかし、それがベストの価値を届けることとイコールなのかといえば、必ずしもそうではありません。

知識・スキル・経験はたくさん蓄積しつつも、実際にそれを相手に伝えるときには、必要最低限に絞る勇気が大事だと改めて思わされました。

 

たとえば、セミナーであれば、その「目的」は、講師がどれだけ多くの知識を持っているかを見せつけることではなく、いかに有益な情報を参加者に持ち帰ってもらって実行してもらえるか、のはずです。

その目的を達成するための手段として、あえて内容を削ることが有効なのであれば、勇気をもって実行するべきでしょう。

 

私自身、S&Cコーチとしてトレーニングプログラムをデザインするときには、どんどんとエクササイズを足していくよりも、いかに減らすことができるかを意識してきました。

足し算よりも引き算が大事、なんてブログ記事も書いたほどです。

» 参考:トレーニングにおいては、足し算よりも引き算が重要(だけど難しい)

 

それと同じことをセミナー業でもやれば良かったわけです。

今回の出来事を通じて、そこの部分が明確になりました。

今後はもっとわかりやすいセミナーを作り上げることができるのではないか、と自分でもワクワクしています。

 

 

まとめ

セミナーに限らず、サービスを提供している方であれば、今日のお話については共感していただける部分があったのではないかと思います。

私自身、今後はできるだけシンプルに、伝わりやすさを重視して、セミナー業を続けていく所存です。

 

とはいえ、時として、難しい内容の説明や、科学的知見の紹介を避けて通ることができない場合もあります。

難しい話をあえてしておくことで、結果としてその後に説明する内容が伝わりやすくなる、理解していただきやすくなる、ということはあるからです。

したがって、単純に難しい話は削りましょうということではなく、あくまでも伝わりやすさを意識して、削るべきところは削り、難しくてもしっかりと説明するべきところは残す。

そんな姿勢でやっていきたいです。

 

※ちなみに、HIITの科学的知見について詳しく学んでみたいという方には、以下の本がオススメです。HIITというテーマについて書かれた本の中ではベストな一冊です。

 

 

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【編集後記】

昨日、プロテインの粉を台所でぶちまけてしまいました。プロテインの袋を棚から落としてしまい、中から粉がドバっと・・・。

まあ、落としちゃった私が悪いんですけどね。

それはそうなんですけど。

それにしても、チャックが緩すぎじゃない?って思いましたよ・・・。

そのプロテインは今回初めて買ってみたメーカーのものだったんですが、しばらく購入する気はありません。

どれだけプロテインの質が良かったり味が良かったりしても、袋のチャックとかがイマイチのところのメーカーの商品は、買いたくなくなっちゃいますよね。

そういう意味では、バルクスポーツのプロテインの袋のチャックが飛び抜けて優秀なんですが。

この経験を逆にサービス提供者側として考えてみると、どれだけトレーニング指導の腕やセミナーの内容に自信があったとしても、お申込みのプロセスがお粗末だったり、ストレスのかかるものだったりすると、お客さんの印象は悪くなってしまいますよね。

私なりに、そのあたりのプロセスはできるだけスムーズに行くようにシステム構築に気を使っているつもりですが、今回のプロテインぶちまけ事件をキッカケに、もっと意識しないとな、と感じました。