「トレーナー自身もトレーニングをガシガシして筋肉ムキムキマッチョであるべきだ!」
「いや、適切なプログラムを作って、適切なエクササイズのやり方を教える指導力さえあれば、トレーナー自身がトレーニングをやっている必要はない!」
「たとえトレーナー自身が筋肉ムキムキマッチョでも、他の人に教える指導力がなければトレーナーとしては失格だ!」
こんな議論はSNS上でたびたび目にします。
いろいろな考え方があるからこそ、議論になりやすいトピックなんだろうと思います。
この議論について、私がプライベートで経験したことをきっかけに、ちょっと新鮮な視点から検証してみました。
自分では妊娠・出産を経験しない男性産科医
現在、妻が妊娠中でして、何回か妊婦健診に付き添って病院に行く機会がありました。
また、出産前教室みたいなものに参加して、産科医のお話を聞く機会もありました。
そこでふと感じたのは「産科医は男性が多いな」ということです。
もしかしたら、他の専門と比べたら女性医師の割合が多いのかもしれませんが、それでもやはり男性医師の数が圧倒的に多い印象です。
厚生労働省の統計によると、平成24年時点における産婦人科の女性医師の割合は31.5%とのことです(最近の統計不正問題のことを考えると正確な数字なのかビミョーですが)。
当たり前のことですが、男性の産科医は妊娠・出産を経験していません。っていうかできません。
でも、妊娠・出産については高度な専門知識を持たれていて、多くの妊婦さんを診てこられた経験があるので、妊婦さんは男性の産科医を信頼して診てもらうわけです。
逆に、妊娠・出産を経験された先輩ママさんであっても、医師でないのであれば、信頼して自分とお腹の赤ちゃんの健康管理を任せる妊婦さんはいないと思います。
医師免許がないと違法だ云々の法律的な問題は横においておいたとしても。
つまり、
- 妊娠・出産経験のある先輩ママさん(医療についてはシロウト)
- 妊娠・出産経験のない男性産科医(医療については専門家)
の2人がいたら、妊婦さんは後者の男性産科医のほうを信頼して、自分とお腹の赤ちゃんの健康管理を預けるだろうということです。
先輩ママさんから体験談を聞くということはあったとしても。
そう考えると、こと「妊娠・出産」に関して言うと、本人の経験よりも、専門知識の有無のほうが重要だということになります。
トレーナー本人の経験と専門知識
「産科医には男性が多いな」と感じたところから深めていった上記の考え方をトレーナーにも当てはめてみると、「トレーナー本人のトレーニング経験よりも専門知識の有無のほうが重要だ」ということになるでしょう。
どれだけトレーナー本人が筋肉ムキムキマッチョであったとしても、たまたま遺伝的に恵まれていただけで、本人がやっているトレーニングは効率が悪いものかもしれません。
にもかかわらず、自分の経験だけで、それと同じトレーニングをクライアントさんにそのまま提供したとしても、同じ効果が出る望みは薄いでしょう。
トレーナー自身がトレーニングをやって筋力が向上した、筋肉が太くなったという経験をしたからといって、どうしたら筋力が向上するのか・筋肉が太くなるのかといった専門知識が身につくとは限らないのです。
同じ考え方はトレーナーだけでなく、現役を引退したアスリートが指導者に転身するケースにも当てはまると思います。
つまり、どれだけ現役時代に活躍したアスリートであったとしても、指導者として他のアスリートに教える能力が高いかどうかは別物であるということです。
先輩ママさんが体験談を伝えることができるのと同じように、先輩アスリートとして体験談や心構えを若いアスリートに伝えることはできるでしょう。
しかし、「技術をコーチングする」とか「試合予定やアスリートのコンディションに合わせて練習内容をオーガナイズする」といった能力については、改めて勉強をしないと身に付けることは難しいはずです。
ちょっと話が横にそれましたが、結局何が言いたいのかというと、男性産科医というわかりやすい例からヒントを得た考え方をトレーナーに当てはめると、本人のトレーニング経験や見た目よりも専門知識の有無のほうが大切であるということです。
男性産科医とトレーナーの違い
もうどうしたって妊娠・出産を自身で経験することが絶対にムリである男性産科医のことを考えれば、「経験 vs 専門知識」のどちらが重要なのかが明白になってわかりやすいですよね。
もちろん、より重要なのは後者の「専門知識」です。
じゃあ、それをトレーナーに当てはめて、本人の「経験」は重要ではない、トレーナーがトレーニングをやる必要はない、筋肉ムキムキマッチョである必要はない、と結論づけていいのかというと、そんなことはありません。
男性産科医とトレーナーの違いは、前者はどうしたって自分で妊娠・出産を経験をすることはできないけど、トレーナーは自分でトレーニングをやることができる点です。
そして、自分でできるのであれば、やるべきです。
男性産科医の例をあげたのは、あくまでも経験だけじゃダメで専門知識のほうが重要ですよと主張するためであって、経験は必要ありませんということではありません。
まとめ
よくある議論について、男性産科医という例を挙げて新鮮な視点を提供してみました。
優先順位ということでいうと「経験 < 専門知識」ではあるものの、経験が必要ないわけではないということです。
トレーナー自身もトレーニングをやることは必須だと思います。
じゃあ、トレーナーの見た目もバキバキの筋肉ムキムキマッチョであるべきかというのはまた別の議論なので、別の機会に考えてみたいと思います。
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【編集後記】
ゲーム・オブ・スローンズ動画視聴にハマっていましたが、とりあえず全部観終わったので、スキマ時間の使い方がKindle読書に戻りました。