#776 【アスリート向け】「トレーニングしたらおかしくなった」という発言をするアスリートへの反論

 

Eduardo balderas UVxd5b tw8 unsplash

 

ダルビッシュ砲が炸裂!!

以前に書いたブログ記事をツイッターで紹介し直したら、ダルビッシュ砲が炸裂しました。

※「ダルビッシュ砲」とは、ダルビッシュ選手からリツイート等されると、ツイートがバズったりブログ閲覧数がめちゃくちゃ増えたりする現象のことを指します。

まあ、そもそも紹介したブログ記事が、ダルビッシュ選手のインタビュー内容を参考に書いたものだったんですが。

 

昔に書いたブログをこのタイミングでツイッターで紹介し直したキッカケは、こちらの記事を読んだことです:

とても関連のある内容だと感じたので、ダルビッシュ選手の考え方も広く知ってほしいと思い、ツイートしました。

 

その後、ダルビッシュ選手とも何度かツイートをやり取りしまして、ちょっと深堀りして解説したら参考になるブログ記事になりそうだと感じたので、書いてみることにしました。

 

 

「トレーニングしたらおかしくなった」という発言をするアスリートへの反論

まず、ダルビッシュ選手のこちらのツイートに、今回のブログで私が伝えたい内容のすべてが凝縮されているので、紹介しておきます。

このツイートには、前半と後半で2つの重要な内容が示唆されています。

  • 前半:そもそも「トレーニングしたらおかしくなった」というのは本当なのか?
  • 後半:現状維持で満足なのか、より上を目指すのか、で話が変わってくる

 

前半:そもそも「トレーニングしたらおかしくなった」というのは本当なのか?

ウエイトトレーニングに否定的なアスリートは

  • やったこともないのに批判するタイプ
  • やってみたけど効果が出なかったOR逆にダメになっちゃったタイプ

の2種類に分類できるでしょう。

前者のタイプは論外なので、「オマエ、自分でちゃんとやってみてから文句言えや、コラ〜」とだけ言っておきます。

 

後者のタイプのアスリートは、せっかくトライしてみたもののダメだった・おかしくなった、ということなので、少しは同情の余地がありそうな気がします。

しかし、そのようなエピソードを目にしたり耳にしたりするたびに私が抱くのは、「”やってみた”って言うけど、本当にちゃんとやったの?」という疑問です。

もっと具体的に言うと:

 

  • ①ちゃんとしたやり方でやったの?
  • ②十分な期間取り組んだの?
  • ③トレーニングで向上した体力を使いこなすように工夫して練習したの?

の3つの疑問が浮かびます。

 

この3つの問いに「Yes」と答えられて、それでも「トレーニングをしたらおかしくなった」というのであれば、私はそのアスリートに同情します。

しかし、私の予想としては、「トレーニングをしたらおかしくなった」と主張するアスリートの99%以上は、上記の3つの問いに「Yes」と答えられないはずです。

1つずつ詳しく見ていきます。

 

①ちゃんとしたやり方でやったの?

何事もそうだと思いますが、正しいやり方でやらないと効果はでません。

たとえば、三ツ星レストランで使われるような高級食材を使っても、シロウトが料理をしたら美味しくなりません。

だからといって、その食材がダメということにはならないはずです。

三ツ星レストランのシェフの手にかかれば、絶品料理に変わるわけですから。

 

ウエイトトレーニングも同じです。

競技力向上に繋がるような正しいやり方で実施しないと効果はでません。

また、ダルビッシュ選手が指摘しているように、トレーニングだけでなく栄養や休養にも注意を払う必要があります。

そして、トレーニング等についての正しいやり方を知るためには、それなりの時間とお金と労力をかけて勉強をする必要があります。

そんな努力もせず、中途ハンバな知識でウエイトトレーニングに取り組んで効果がでなかったとしたら、それはウエイトトレーニングがダメなのではなく、やり方がダメなだけです。

(っていうか、勉強しようとせず中途ハンバな知識でやろうとする性根がダメなんじゃ〜〜〜〜!!)

 

とはいえ、アスリート自身がイチから勉強をして正しいウエイトトレーニングのやり方を身につけるのは現実的ではありません。

そこで、通常は専門家にトレーニング指導をお願いすることになります。

ただし、専門家にもいろんなタイプがいますし、腕の善し悪しもピンキリです。

たとえば、見た目の改善を専門とするトレーナーから指導を受けて、それが競技力向上につながらなかったとしたら、それは専門家のタイプの選択が間違っています。

また、競技力向上が専門であると謳っている指導者であっても、その人の専門家としての能力が低ければ、その人の指導を受けても競技力向上には繋がりません。

 

トレーニング指導を受けている専門家が無能のため、正しいウエイトトレーニングを実施できず、結果としておかしくなった。

そういうことであれば、一番の責任はその専門家にあります。

でも、ちゃんとした専門家を選ぶために、最低限の情報収集や勉強を怠ったのはアスリート本人なので、同情する余地はありません。やはり本人の責任も大きいです。

 

 

②十分な期間取り組んだの?

ダルビッシュ選手も「ただ数ヶ月やっただけで・・・」と発言されているように、ウエイトトレーニングを数ヶ月やっただけでその良し悪しを判断することは不可能です。

体力向上ということだけに関して言えば、数か月だけでもトレーニングの効果を感じることはできます。

しかし、それが実際の競技力向上に繋がって、競技成績UP等の数字として現れてくるまでには、年単位の時間がかかるものだと私は考えています。

 

» 参考:トレーニング効果が競技成績向上に結びつく実感を得るのにかかる時間

 

トレーニングは魔法じゃないんですから、すぐに競技力UPするわけがありません。

これはトレーニングに限らず、数か月だけやったらすぐに競技力UPに繋がるようなものは他にもないはずです。

もしあったら、そんなのみんなすでにやっているはずで、それで他と差をつけることは難しいでしょう。

 

「トレーニングしたらおかしくなった」という発言をするアスリートの多くは、1年間以上継続することなく、見切りをつけてしまっているのだと私は予想します。

そんな姿勢なら、何に取り組んでも長続きせず、アスリートとして大成することは難しいだろうと思います。

 

 

③トレーニングで向上した体力を使いこなすように工夫して練習したの?

トレーニングそのものは成功して、競技力向上のために必要な体力がそれなりに向上したとします。

しかし、それだけで自動的に競技力が向上するわけではありません。

「体力が向上した」ということは「体力が変化した」ということなので、その体力の変化に合わせて、技術も変化させる必要があるのです。

体力の向上(=変化)に合わせて技術を最適化する(=変化させる)ことを「トレーニング効果の転移」と呼びます。

つまり、「体力の向上」と「トレーニング効果の転移」の2つが合わさってはじめてパフォーマンス向上が実現するというわけです。

逆に言うと、体力が変化したのに技術がまったく変わらなければ、場合によってはパフォーマンスが低下することもありえるのです。

» 参考:【論文レビュー】トレーニングによる筋力UPは、やり方によっては競技力UPにも競技力DOWNにもつながりますよって事をコンピューターシミュレーション研究の結果をもとに考えてみる

 

このあたりのことを理解した上で、体力の向上に合わせて最適な技術を身につけ直し続ける作業を続ける必要があります。

そして、そのためには、工夫して練習を重ねることが必須です。

ただトレーニングをやって体力向上させればいいってもんじゃないんです。

「トレーニングしたらおかしくなった」という発言をするアスリートの多くは、このあたりの考え方の理解が不足しているのではないかと感じます。

 

 

後半:現状維持で満足なのか、より上を目指すのかで、話が変わってくる

ダルビッシュ選手は「近年、野球の世界で日本人がトップ層に入るためには「フィジカル」が避けては通れない道になってきています」と発言されています。

ここで重要なのは「トップ層に入るためには」という点です。

現役バリバリで、トップクラスで活躍されているダルビッシュ選手の肌感覚として、トレーニングをせずにトップ層に入ることは困難になってきているということなので、そこを目指すのであれば、ちゃんとしたやり方でウエイトトレーニングを実施して体力を向上させた上で、その体力を使いこなせるように工夫をしながら練習をして、トレーニング効果の転移を図る必要があるということです。

先述したように、トレーニングをして体力が向上すると、それに合わせて技術を最適化することができないと、逆にパフォーマンスが低下してしまうリスクはあります。

しかし、より上を目指すのであれば、そのリスクをとる覚悟が必要だということです。

 

その一方で、トラとかライオンのタイプのアスリートが、トレーニングをしなくても現状そこそこ活躍できていて、そのレベルを維持できれば満足である、というケースであれば、トレーニングをしないという選択もアリでしょう。

トレーニングをするとパフォーマンス向上のポテンシャルが高まるのは間違いありませんが、逆に低下するリスクもあるので、そのリスクを避けて現状維持を選ぶということです。

冒頭で紹介したNumberの記事内の涌井選手はこのパターンなんだと勝手に私は想像しています。

トレーニングをしてみて体力が向上したけど技術の調節がうまくいかずパフォーマンスが低下したから、トレーニングをやめて元の技術(と体力レベル)に戻した、ということなんだろうと思います。

ただし、この選択をした時点で、さらなる高みを目指すことは諦めることになります。

 

とはいえ、涌井選手レベルのアスリート(トラとかライオン)であれば、トレーニングをしなくても活躍できているわけで、あえてトレーニングをせずに現状維持を選ぶのもアリですが、現状として活躍できていないアスリート(シマウマ)の場合は、リスクをとってでもトレーニングに取り組まざるをえないと思います。

そうじゃないと捕食されてしまって生き残ることができません。

で、現状維持に満足せずさらに上を目指すなら、変化を恐れず、試行錯誤するしかないわけです。

 

 

まとめ

それなりに活躍をしていて実績のあるアスリートが「トレーニングしたらおかしくなった」と発言をしているのを目にしたり耳にしたりしても、「じゃあ、トレーニングは必要ないのか」とか「トレーニングって逆効果なのか」と思わないでください。

そりゃ、ちゃんとやらなければ逆効果ですけど、ちゃんとやれば間違いなく競技力向上に貢献してくれるはずです。

 

そもそも、そのような発言をするアスリートの多くはトラとかライオンタイプのアスリート(生まれつき身体能力が優れている)です。

もしあなたがシマウマタイプのアスリート(生まれつき身体能力が高くない)なのであれば、彼らの意見なんて参考になりません。

彼らに捕食されずに生き残るためには、変化を恐れずトレーニングに取り組む選択肢しか残されていません。

また、トラとかライオンであっても、さらに上を目指すのであれば、現状維持というぬるま湯を捨てて、リスクをとってでもトレーニングに取り組むことは不可欠です。

投資とかと同じで、大きな利益を手に入れることができるのは、大きなリスクをとることができる人だけです。

 

とはいえ、トレーニングをするというのは、どちらかというと「投資」に近いものであり「ギャンブル」ではないので、リスクをとるからにはリスクマネジメントも重要です。

そのためには、リスクの正体を理解しておくことが必要で、最低限の勉強をアスリート自身がする必要があります。

まずは「ウエイトトレーニングが競技力向上に本当に繋がるのか?」という点を理解するために、そのロジックをわかりやすく解説した拙著を読まれることをオススメします。

 

なんだか最後には私の本の宣伝みたいになってしまいました。

しかし、「(ウエイト)トレーニングしたらおかしくなった」という他のアスリートの発言を聞いて動揺してしまうアスリートは、ウエイトトレーニングをしたら競技力向上に繋がるはずだ、ということに自信が持てていないはずなので、まずはそこのロジックをしっかりと理解することが大切です。

そこに自信をもって、継続してちゃんとしたやり方でトレーニングに取り組めば、間違いなく大きな利益を手に入れることができるはずです。

 

 

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【編集後記】

先日「ジョブチューン」というテレビ番組でドミノ・ピザが登場しているのを見て、食べたくなりました。私はアメリカに留学して以来、デリバリーピザはずーっとドミノ・ピザ派です。