#733 筋肉痛が残っていたらトレーニングしないほうがいいのか?

 

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ウエイトトレーニングをされる方であれば、筋肉痛を経験したことがあるはずです。

そして、次のような疑問を1度は抱いたことがあるでしょう。

  • 「筋肉痛が残っているのにトレーニングしてもいいのかな?」
  • 「筋肉痛が消えるまで待ってから、次のトレーニングをしたほうがいいのかな?」

こうした疑問はごもっともです。

私もこれらの疑問が頭に浮かんだことは何度もあります。

そこで、現時点で得られる科学的知見をもとにして「筋肉痛が残っていたらトレーニングしないほうがいいのか?」について考えてみたいと思います。

 

 

筋肉痛が残っていたらトレーニングしないほうがいいのか?

まず、「筋肉痛が残っていたらトレーニングしないほうがいいのか?」と疑問を抱く理由は、筋肉痛が残っている時にトレーニングをすると悪影響があると考えているからです。

そもそも悪影響があるなんて考えないような人は、筋肉痛が残っていようが気にせずトレーニングをするはずなので。

 

筋肉痛が残っている時にトレーニングをすることで起こりうる悪影響を整理してみると、次の3つの可能性が考えられます:

  • ①さらに筋肉痛がひどくなったり、さらに筋肉がダメージを受ける
  • ②トレーニング中のパフォーマンス(例:挙上できる重量、量)が低下する
  • ③トレーニング効果が得られないOR低下する

それぞれについて検証してみます。

 

 

①さらに筋肉痛がひどくなったり、さらに筋肉がダメージを受ける

これは、前回のトレーニングによるダメージから筋肉が回復しつつある時に、次のトレーニングをしてしまうと、さらにダメージが蓄積して、回復が遅れてしまうのではないか?という不安です。

これについて調べた研究もいくつかあり、それらの結果から判断すると、このような悪影響が起こる可能性は極めて低いと考えられます。

たとえば、1回目のトレーニングをするとその後に筋ダメージや筋肉痛が起こりますが、それらがまだ残っているタイミングで2回目・3回目のトレーニングをしても、1回目のトレーニング後のリカバリープロセスは阻害されないと報告されています。

もっと具体的に言うと、1回だけトレーニングをやった場合と、1回トレーニングをやった2日後と4日後にもトレーニングをやった場合とでは、1回目のトレーニングから7日後に残っている筋肉痛や筋ダメージの大きさには差がないという研究結果もあるのです(Nosaka & Newton, 2002)。

もちろん、2回目・3回目のトレーニングをやった直後は一時的に筋ダメージや筋肉痛の程度が増えますが、それは筋肉痛が残っていてもいなくてもトレーニングをすれば起こることであり、「筋肉痛が残っているタイミング」でやることが特別に悪影響を与えるという科学的根拠はなさそうです。

 

 

②トレーニング中のパフォーマンス(例:挙上できる重量、量)が低下する

筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをしても、挙上できる重量やレップ数が下がってしまうのではないか、というのはもっともな懸念です。

実際に、1回目のトレーニングによる筋ダメージや筋肉痛が残っている3日後に2回目のトレーニングをした場合、1回目よりもパフォーマンスが下がったとする報告があります(Chen, 2003)。

したがって、②の悪影響は実際に起こるものだと考えられます。

 

 

③トレーニング効果が得られないOR低下する

筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをすると、②で説明したようにトレーニング中のパフォーマンスが下がってしまうので、筋肉痛がないフレッシュな状態でトレーニングをやった場合と比べると、身体に与えることのできるトレーニング刺激は小さくなるものと考えられます。

たとえば、本来であれば100kgのバーベルでトレーニングできるはずなのに、筋肉痛が残っているせいで90kgしか挙げられないと、10kgぶんだけトレーニング刺激が小さくなってしまいます。

私は身体に与えるトレーニング刺激のことを「入力」と呼び、その結果得られるトレーニング効果や生理学的な適応のことを「出力」と呼んだりしますが、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングすると「入力」が小さくなるので、その結果「出力」も小さくなると考えられるのです。

したがって、この3つ目の悪影響は実際に起こる可能性が高いと言えます。

 

しかし、そのような悪影響が起こるのは一時的なものです。

最初は筋肉痛が発生するようなトレーニングであっても、継続して実施していれば次第に身体が慣れて筋肉痛が起こらなくなる、というのは皆さんも経験したことがあるはずです。

そのような効果のことを「repeated bout effect」と呼びます。

たしかに、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをすると、一時的にトレーニング効果は下がりますが、repeated bout effectのおかげですぐに筋肉痛は起こりづらくなるので、その後も継続して筋肉痛が残っている状態でトレーニングをすることはありません。

そして、長期的な視点で考えると、repeated bout effectが起こる前に実施した数回程度のトレーニングにおいて、その「入力」と「出力」が低下したからといって、長期的なトレーニング効果に大きな影響を及ぼすことは考えづらいです。

 

さらに言うと、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをやらない場合、筋肉痛がなくなるまでの間はトレーニングをやらないことになります。

つまり、「入力」がゼロなので「出力」もゼロです。

筋肉痛がないフレッシュな状態でトレーニングをやる場合と比べると、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをするとトレーニング効果は少し低下するはずですが、そもそもトレーニングをやらない場合と比べれば、トレーニング効果ははるかに大きいです。

だから、やらないよりはやったほうがいいはずです。

 

 

まとめ

筋肉痛が残っている時にトレーニングをすることで起こりうる3つの悪影響のうち、①はおそらく起こらないので心配する必要はありません。

②と③は実際に起こる可能性が高いですが、一時的なことであり、repeated bout effectのおかげですぐに筋肉痛は起こらなくなるので、長期的なトレーニング効果に与える影響はとても小さなものにすぎません。

また、筋肉痛があるからといってトレーニングをやらなければトレーニング効果はゼロなので、それと比べれば筋肉痛が残っている状態でもトレーニングをやったほうが、長期的なトレーニング効果にもプラスのはずです。

したがって、それらの事実から判断をすると、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをやって大丈夫だと言えます。

筋肉痛がなくなるまで次のトレーニングを延期する必要はありません。

 

おそらく、筋肉痛が残っていたらトレーニングをしないほうがいいのではないか、と考える背景には、「超回復理論」というコンセプトの存在があるものと想像できます。

「超回復理論」に基づいて考えると、疲労やダメージが溜まっていてpreparednessが低下しているタイミングでトレーニングをしても意味がない、むしろ逆効果になります。

実際にそうなるという話ではなくて、「超回復理論」の考え方だとそういうことになるはずだ、ということです。

筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングを実施することを不安に思う人は、無意識に「超回復理論」的な思考に支配されているのかもしれません。

 

しかし、「超回復理論」は古いコンセプトであり、現実に起こる現象をうまく説明できるものではない、と現在では考えられています。

むしろ、「フィットネスー疲労理論」と呼ばれるコンセプトのほうがより洗練されていて、現実に起こる現象をよりうまく説明することができます。

そして、「フィットネスー疲労理論」的な思考では、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをすることを禁忌と捉えるロジックは存在しません。

» 参考:超回復理論 vs. フィットネスー疲労理論

 

以上の理由から、筋肉痛が残っているタイミングでトレーニングをしてもOKです。

むしろ、やらないよりやったほうがいいです。

 

 

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【編集後記】

ポッドキャストを聞きながら、人通りの少ない場所を散歩しました。やはり音声での情報発信っていいですね。動画よりもさまざまな場面で手軽に聞けるので、使い勝手が良さそうです。