論文レビューです。
睡眠時間と傷害発生率についてアンケート調査をした論文を紹介します。
論文内容
対象
中高生年代の学生アスリート112名(平均年齢:15.2歳)。
調査方法
Eメールでアンケート調査への協力を要請し、Eメールに含まれているリンク先で10の質問(睡眠時間含む)に答えてもらった。
傷害の定義は「evaluationまたはtreatmentのためにアスレチックトレーナールームを訪れる必要があったもの」とし、学校のアスレチックトレーナールームの傷害記録(過去21ヶ月)からチェックした。
調査結果
睡眠時間が8時間未満のアスリートのうち65%が傷害を経験していた。一方、睡眠時間が8時間以上のアスリートで傷害を経験していたのは31%だった。
また、multivariate analysisによると、睡眠時間が8時間未満のアスリートは8時間以上のアスリートと比べて、傷害リスクが1.7倍高かった。
Limitation
- 睡眠時間を直接測定しているわけでなく、本人の申告に頼っている。
- 対象が学生アスリートなので、もっと年齢の高いアスリートにも当てはまるかは不明。
まとめ
一般的にトレーニングの世界では、ただトレーニングをガシガシするだけではダメで「トレーニング、栄養、休養」の3つが同じくらい重要である、と言われます。
休養の方法にはマッサージ・入浴(熱いの、冷たいの、交代浴)・プール・着圧ソックス等いろいろありますが、一番ベーシックで最も効果が高いのは睡眠です(タダだし)。
今回紹介した論文では、8時間以上睡眠することによって傷害リスクを低減させることができる可能性が示されました。
アスリートに対してなんとなく「しっかり寝ろよ!」と言うより、「睡眠時間が8時間未満だと、ケガのリスクが高まるっていう研究結果があるんだよ」と教えて(脅して?)あげたほうが説得力があると思うのですが、いかがでしょうか?
ちなみに、この研究のデザインだと因果関係の有無までは断定できません。
つまり、睡眠時間が8時間未満であるアスリートが睡眠時間を8時間以上に伸ばしたら傷害リスクが低下する、とまでは言い切れないということです。
あくまでもその可能性があることを示したデータになります。
ただ、因果関係を直接調べようとするとかなり大変なので、おそらく今後そのような研究が実施されて論文として報告される可能性は低いでしょう。
であるならば、現場で働く人間としては、今回紹介した研究をもって「アスリートは8時間以上寝たほうが良さそうだ」という解釈を私だったらします。
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【編集後記】
今回紹介した論文が掲載されている学術誌は、私の勤務先では定期購読していなかったため、ResearchGateというサービスを利用して手に入れました。