今朝、以下のような投稿をしました(ツイッターがXに変わったので、「ツイートしました」って言えなくなって、なんて言っていいのか手探り中です)。
シーズン中は筋肉痛を避けるために、エキセントリックな刺激をできるだけ排除して、アイソメトリックやコンセントリックをメインに筋トレすべし、という趣旨のツイートを見かけました。
数週間ほどの短いシーズンであれば、その方針でいいと思います。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
結構重要なトピックだと思うので、ブログでも掘り下げて書き残しておきます。
最終的には「筋肉痛についての知識は重要だから、私の動画教材を買ってね♡」という結論になります。
シーズン中のウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除すべきか否か?
冒頭の投稿をしたそもそものキッカケは、「シーズン中のウエイトトレーニングにおいてはエキセントリックな刺激を避けましょう」という趣旨の投稿を見かけたことです。
投稿主がなぜそのような考えに至ったのかを推察すると、エキセントリックな刺激は筋肉痛を引き起こしやすいからだと考えられます。
これは事実で、たしかにエキセントリックな力発揮をすると、コンセントリックやアイソメトリックに比べて、筋肉痛が発生しやすいです。
で、シーズン中ということは試合があるわけで、筋肉痛が残っている状態で試合に臨むとパフォーマンスが低下してしまう恐れがあります。
だから、筋肉痛による悪影響を最小限に抑えて、できるだけ良いコンディションで試合に臨むためにも、シーズン中は筋肉痛を引き起こしやすいエキセントリックな刺激をウエイトトレーニングから排除しましょう、という主張に繋がったのでしょう。
個人的には、この思考プロセスは嫌いじゃありません。
1発の試合に向けてのテーパリング期間中(通常2週間前後)や、数週間ほどの短いシーズン中であれば、この方針は間違いではないと思います。
もちろん、ウエイトトレーニングにおいてエキセントリックな刺激を完全に排除するのは難しいですが、できるだけ減らす工夫をするくらいであれば現実的に実施可能です。
しかし、プロスポーツのようにシーズンが何ヶ月も続くようなケースにおいては、ウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除してしまうのは個人的に反対です。
主な理由は、「repeated bout effect」が失われてしまうからです。
とくにエキセントリックな筋活動を伴う運動をすると、筋肉痛が発生します。しかし、同じ運動を繰り返していると、次第に身体が慣れて、筋肉痛が発生しづらくなります。そのような現象または適応のことを「repeated bout effect」と呼びます。
一般的に、エキセントリックな運動のほうが、この「repeated bout effect」の効果が大きいと考えられています。
したがって、ウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除してしまうと、この「repeated bout effect」が失われてしまう、もしくは大幅に弱まってしまうわけですね。
もし、そのような状態で、競技中にエキセントリックな筋活動が起こると(例:ジャンプからの着地、減速、方向転換)、筋肉痛が発生しやすくなり、その程度も大きくなる可能性があります。
試合後だけでなく練習後も、です。
つまり、シーズン中に筋肉痛が発生して試合へ悪影響を及ぼすことを避けるために、ウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除することで、逆に筋肉痛が発生しやすい状態を作り出してしまう恐れがある、ということです。
まさにパラドックスですね。
「いやいや、競技中に筋肉痛に繋がりうるエキセントリックな筋活動が起こるのであれば、練習や試合をするだけでも「repeated bout effect」が発生して、筋肉痛を予防してくれるってことじゃないの?」
そう思われた読者もいるかもしれません。
確かにそのとおりです。
しかし、競技をするだけでは、エキセントリックな刺激が身体に加わる頻度やタイミング、そして強度をコントロールすることは非常に難しいので、狙って「repeated bout effect」を使いこなすことができません。
一方で、ウエイトトレーニングでは、そのあたりをかなり上手にコントロールすることが可能であり、それこそが、シーズン中もウエイトトレーニングにおいてエキセントリックな刺激を継続して取り入れることのメリットであると考えられます。
さらには、エキセントリックな刺激を排除してコンセントリック主体でウエイトトレーニングを実施すると、単純に「repeated bout effect」が失われてしまう、もしくは大幅に弱まってしまうだけでなく、むしろウエイトトレーニングをしない場合よりも筋肉痛になりやすくなってしまう、という可能性を報告している研究も存在します。
つまり、何もしないよりも、コンセントリックなウエイトトレーニングをすることで、エキセントリックな刺激に対する耐性が逆に弱まってしまいかねないのです。
以上のことを総合的に考えると、プロスポーツのようにシーズンが何ヶ月も続くようなケースにおいては、ウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除せずに維持するほうがメリットが大きいと考えられます。
また、エキセントリックな刺激があったほうが、長期的なトレーニング効果(例:筋肥大、筋力向上)も高まります。
シーズンが長い場合は、目の前の試合に向けてのコンディション調整だけでなく、長期的なトレーニング効果という視点も大切になるので、やっぱりエキセントリックな刺激は排除しないほうがいいでしょう。
シーズン中の筋肉痛のマネジメント
シーズンが長い場合は、シーズン中もエキセントリックな刺激を伴うウエイトトレーニングを継続したほうが、「repeated bout effect」が残るので筋肉痛への耐性を維持しやすい。
すでに説明したように、これは事実です。
その一方で、エキセントリックな刺激を伴うウエイトトレーニングを実施すると、48時間後をピークとして筋肉痛が発生してしまう、というのもまた事実です。
なので、「シーズン中もエキセントリックな刺激を伴うウエイトトレーニングを継続したほうが、「repeated bout effect」が残るので筋肉痛への耐性を維持しやすいってことは、オフシーズン中と同じようなやり方でやっちゃっていいってことでしょ!?」なんて姿勢で望むと失敗します。
シーズン中のウエイトトレーニングにおいては、「repeated bout effect」を維持しつつも、筋肉痛が試合に悪影響を及ぼさないようにするために、独自の工夫が求められます。
その具体的な方法については、過去のブログ記事で説明しているので、そちらを参考にしてみてください。
» 参考:シーズン中にできるだけ筋肉痛を抑えながらウエイトトレーニングを継続するための5つの工夫
まとめ
筋肉痛が試合でのパフォーマンスに悪影響を及ぼさないように、ウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除する。
この工夫は、時と場合によっては「アリ」です。
具体的には、1発の試合に向けてのテーパリング期間中(通常2週間前後)や、数週間ほどの短いシーズン中などが例として挙げられます。
数週間程度であれば「repeated bout effect」がある程度は維持される可能性が高く、また、そのくらいの短期間であれば一時的にトレーニング効果(例:筋肥大、筋力向上)が低下してしまうことによるデメリットは小さいからです。
一方、プロスポーツのようにシーズンが何ヶ月も続くようなケースにおいては、ウエイトトレーニングからエキセントリックな刺激を排除せずに維持するほうがメリットが大きいケースが多い、というのが今回のブログの趣旨です。
ただし、筋肉痛が試合に悪影響を及ぼしてしまう、というデメリットが生じうるのもまた事実です。
メリットを高めつつデメリットを抑えるために、シーズン中ならではの工夫が必要です。
その工夫をするためには、筋肉痛についての知識が必要になります。
そんな知識を身につけるために、ぜひこちらの動画教材をお買い求めください。
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知らないと、無意識のうちにアスリートに不利益を与えてしまいかねませんから。
アスリートのためにも、学びましょう。
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【編集後記】
家族で山梨に旅行に行ってきました。
帰りの高速道路で、複数の事故渋滞に巻き込まれ、本来であれば3時間くらいで帰ってこれるはずが、6時間くらいかかりました。
渋滞中のブレーキやアクセル操作を長時間続けると、腸腰筋と前脛骨筋がやられますね・・・。