個人指導を中心にやってきたS&Cコーチがチーム指導を始めて感じたこと
私がS&Cコーチとして活動を初めてから最初の10年ほどは、個人もしくは少人数グループに対してトレーニング指導をする機会がほとんどでした。
7~8割は完全に1対1の個人指導で、残りの2~3割が少人数グループ指導といったところです。
後者の少人数グループ指導も、2~5人程度がほとんどで、多くても10人以内でした。
2017年にフリーランスとして独立してからは、チームに対してトレーニング指導をする機会も増えました。
多くの人数を同時にトレーニング指導するというのは、個人指導とはまた違ったスキルが求められます。
難しくもあり、それと同時に、工夫のし甲斐があって面白さも感じています。
そのあたりの気持ちを先日ツイートしました。
チームに対してのトレーニング指導は難しい。
・多い人数
・限られた時間
・限られた数の器具
・適切なフォームを習得済みのエクササイズ
・新型コロナ感染予防対策これらをすべて考慮に入れた上で、最適なやり方を模索する必要がある。
まるで難解なパズルを解くような作業だ。
でも面白い。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
チーム指導を中心に活動をされているS&Cコーチの方々は、この難解なパズルを解いて、すべてがバシッとハマったときに面白さややりがいを感じているんだろうな〜と想像できます。
チーム指導をメインにしているS&Cコーチも、個人指導をするとスキルアップに繋がる
チーム指導には特殊なスキルが必要なので、個人指導を中心に活動してきた私がその経験だけで活動することは難しく、新たなスキルの獲得を余儀なくされました。
いまだに試行錯誤している状態です。
その一方で、個人指導をやってきたからこそ身につけることができた知識やスキルが、チーム指導で活かせている部分もあると感じています。
個人指導では、アスリートの動きを時間をかけて見ることができるし、エラー動作が起こったときに「なぜだろう?」とじっくり考えることもできるし、それに対してどのような声がけをすれば改善できるのかをじっくり吟味することもできます。
そのような形で、一人ひとりに時間をたっぷりかけて考えながら指導をすることができて、さらにさまざまな癖や特徴をもったアスリートを指導してきたので、自分の中でたくさんの引き出しを持つことができました。
それがチーム指導でかなり役に立っていると感じるのです。
チーム指導においては、一人ひとりのアスリートに多くの時間を割くことが難しいので、瞬時に目の前のアスリートの動きのパターンを分析して、適切な声がけを選択する能力が求められます。
その場で時間をかけて考えている余裕なんてありません。
そんなときに、個人指導をすることで時間をかけて考える経験を蓄積して、多くの引き出しを持っていると、瞬時に「あ、この動作エラーは〇〇が原因の可能性が高いから△△と声がけをすれば修正できそうだな」ということがわかるのです。
わざわざ考える必要はなく、過去に時間をかけてすでに考えたことのある経験の引き出しの中から、目の前のアスリートに当てはまるものを選んで取り出せばいいだけです。
実際に、今は高校バスケ部にチーム指導をしていますが、「アスリートの動作を見てエラーを分析して原因を予測して適切な声がけをする」ということを瞬時に実施し、次から次へと繰り返しています。
その時はあまり深く考えてなんていません。
自分の中にある引き出しの中から必要なものを選択する作業をグルグルとひたすら繰り返しているだけです。
この作業をかなり高速でおこなっているので、指導が終わることろには脳ミソがかなり疲れていますが。
これは完全に私見ですが、個人指導の経験を積んで、深く考える機会を作って指導の引き出しを増やしておかなかったら、今チーム指導でやっているほどのきめ細かい指導はできていないと思います。
もっと大雑把に見て、マネジメント優先の指導になっていたのではないかと感じています。
そんな個人指導→チーム指導という順番で経験をしたことを踏まえると、たとえチーム指導をメインとしているS&Cコーチであっても、個人指導をする機会をつくることは、スキルアップに繋がり、チーム指導に活かされるのではないかと思います。
「いや、俺はチーム指導がしたいんだ、そこにこの仕事の面白さを感じているんだ!」という方もいるかもしれませんが、チーム指導に繋がるものと思って、個人指導も試しに経験してみることをオススメします。
まとめ
今日は、チーム指導をメインとしているS&Cコーチも、個人指導を経験すると役に立ちますよ、というお話をしました。
これに似た話で、一つの競技に特化したS&Cコーチも、それ以外にも複数の競技を指導する経験をすると役に立ちますよ、というブログも過去に書いています。
» 参考:S&Cコーチとしてひとつの競技に特化すべきか、あらゆる競技をトレーニング指導するべきか
さらには、アスリートの指導をしたいS&Cコーチであっても、一般の方を指導する経験をすることで、アスリートの指導スキルアップに繋がるのではないか、というブログ記事も書いています。
これらの話に共通しているのは、自分がやりたいことを明確にして、それについての知識やスキルを深めていくのも重要ですが、ちょっと視野を広くして、自分がやりたいこととはズレていると思われることを経験することが、意外と自分がやりたいことに活かせることが多いですよ、という点です。
私はそれなりにさまざまな経験を積んできて、振り返ってみて、そう感じています。
まだ駆け出しのS&Cコーチの方は、騙されたと思って、自分がやりたいことだけではなく、さまざまな経験を意図的に積んでみてください。
将来的に「河森の言うことを聞いておいてよかったな」と思える日が来るはずです。
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【編集後記】
一昨日にS&C筋肉痛セミナーをオンラインで実施しました。
その様子を録画した動画の販売も開始しています。
プログラムデザインにもガッツリ関わってくるトピックであり、具体的な例も挙げて、結構深く突っ込んだ話をしています。
セミナーのテーマとして「プログラムデザイン」は需要が高いと感じますが、適切なプログラムデザインをするためには、筋肉痛についての知識や考え方を押さえておくことは必須です。