肩甲骨を柔らかくしたい!?
「肩甲骨を柔らかくしたい」とアスリートから言われることがあります。
言葉のとおり受け止めると、「肩甲骨という骨そのものを柔らかくしたい」ということになってしまいます。
しかし、仮にそれを実現できたとしたら、骨の強度が弱くなりすぎて、アスリートとしては(一般人としても)全然ダメな状態になってしまうでしょう。
そもそも肩甲骨がグニャングニャンしていたら、まともに肩を動かせません。
実際は、「肩甲骨を柔らかくしたい」と言ったアスリートも、骨そのものをグニャングニャンに柔らかくしたいと思っているわけではないはずです。
アスリートの意図としては、肩甲骨の動きが固いから、しっかりと動かせるようになりたい、といったところだと思います。
つまり、アスリートの「発言」と実際の「意図」が必ずしも一致しないことがあるということです。
自分の中で感じていることや課題を、上手に言葉にできるアスリートもいれば、できないアスリートもいるのです。
後者のタイプのアスリートを指導する時は、S&Cコーチの側がアスリートの意図を推測してあげることが必要になります。
肩甲骨の動きを柔らかくするには
上記のアスリートの意図をくんで、「肩甲骨の動きが固い」点を改善させたいんだろうと推測したとします。
じゃあ、固いものを柔らかくするんだったらストレッチ・モビリティドリル・ストレッチポールやテニスボールでコロコロ等をやっておけばいいだろうと考えたいところですが、それだけだと少し浅いような気がします。
たしかに、肩甲骨の動きが固い場合は、肩甲骨に付着している筋群が固くなっていることが影響をしている場合もあります。
だから、それらを柔らかくするような方法を選択すれば、多少の改善が期待できることは間違いないです。
しかし、それだけでは、肩甲骨の動きの固さを改善して、しっかりと動かせるようになるには不十分であることが多いでしょう。
私だったら、ストレッチ等で肩甲骨まわりの筋群を柔らかくするのと並行して、それらを強化するところまで考えます。
具体的には、肩甲骨の動きを伴うようなウエイトトレーニング種目を実施させるのがメインになります。
腕立て伏せで肩甲骨の外転をしっかり行わせたり、オーバーヘッドプレスで肩甲骨の上方回旋・挙上をしっかり行わせたり、インバーテッドロウで肩甲骨の内転をしっかり行わせたり、懸垂で肩甲骨の下方回旋・下制をしっかり行わせたり・・・。
それらのエクササイズの中で、適切な肩甲骨の動きをできるようなキューイングを与えて、ガシガシと鍛えます。
それで足りない場合は、肩甲骨の動きに特化したアクティベーション種目をウォームアップに取り入れたりしますが、メインはウエイトトレーニングでガシガシと強化することには変わりません。
まとめ
「肩甲骨を柔らかくしたい」というアスリートの訴えを聞いて、その解決策として「ウエイトトレーニングでガシガシ強化すること」に結びつけるのはなかなか難しいかもしれません。
しかし、アスリートの「発言」から「意図」をくみとり、根本的な解決策を探していけば、たどり着けるはずです。
また、「ウエイトトレーニングで(できるだけ大きな可動域を使って)ガシガシ強化すること」を中心に考え、それを可能にするために、ストレッチやアクティベーションドリル等を補助的に使うというのは、S&Cコーチ的な考え方かもしれません。
ただし、肩甲骨をしっかりと動かせるようにするためには、最終的には筋力が必要になるので、そこを目指すのは当たり前だと思います。
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