今の職場での契約も来年度で終わるので、その後はバスケチーム等を指導したいな〜と思っています。
そこで、バスケ選手のように背の高いアスリート(特に大腿部が他の部位と比較して長いアスリート)に対してウエイトトレーニングを指導するうえで、どのようなことを考える必要があるのか想定してまとめてみます。
※ちなみに、同じ背の高いアスリートでも、脚が長いのではなく胴体が長いアスリートもいますが、今回は脚(特に大腿部)が長いパターンに特化して書いてみます。
大腿部が長いアスリートの特徴
①スクワットやデッドリフトで上体の前傾がキツくなる
コチラのブログ記事でも紹介しましたが、大腿部が胴体や下腿部と比較して長い場合、スクワットにおいて上体の前傾が強くなる傾向があります。
デッドリフトの場合、腕の長さによって多少の差は出てきますが、基本的には同じような傾向が見られるはずです。
②股関節伸展筋群(臀筋、ハムストリング)や脊柱起立筋群への刺激が大きくなる
①の結果として股関節周りのモーメントが増えて、標準的な体型のアスリートと同じ強度・量・頻度でウエイトトレーニングを実施していても、股関節伸展筋群(臀筋、ハムストリング)や脊柱起立筋群への刺激が大きくなります。
この増えたトレーニング負荷を考慮に入れてウエイトトレーニングプログラム全体をうまくマネジメントしないと、ケガや痛みにつながる可能性が出てきます(特に腰を痛める可能性あり)。
対策方法
①フォームを調節する
スクワットにおいては、足幅を広げたりつま先・膝を外に向けたりすることで、大腿部の前後方向の距離を縮めることができ、上体の前傾角度を少しだけ和らげることができます。
デッドリフトにおいては、足幅をそれほど広げることはできませんが(スモウデッドリフトに変更しない限り)、それでもつま先・膝を少し外に向けることで、上体の前傾角度を和らげることは可能です。
そのようにフォームを調節することで、トレーニング負荷を各関節間でバランス良く分配することになり、結果として腰に負担がかかり過ぎるような状況を多少は回避できます(完全に回避はムリです)。
スクワット等において上体の前傾を和らげるもう1つのオプションとして、意図的に膝を前に出して下腿部の前傾を強めるという方法もありますが、私はこのアプローチは取りません。膝への負担が増えるからです。
特にバスケ選手は膝を痛めることが多いので、トレーニングにおいてさらに膝を酷使するのは避けたいところです。
あくまでも踵重心でお尻をメインに使うフォームでスクワットをさせます。その理由はコチラで説明済みです。
実際のバスケの動きの中では、膝が前に出ることはあります。
だからと言って、トレーニングでもそのような動きをコピーして「これぞ特異的トレーニングだぜ!」みたいなことをアスリートにやらせるつもりは一切ありません。
競技の動きは競技の動きとして膝に負担がかかるのはしょうがないので、せめてトレーニングにおいては膝に負担のかからないフォームでエクササイズを実施させて臀部やハムストリングの筋力を鍛えてあげて、それが結果として競技中の膝への負担も減らしてくれるという考えです。
②片脚エクササイズを多めに取り入れる
リバースランジやステップアップのような片脚エクササイズにおいては、背の高いアスリートであっても上体はそれほど前傾させる必要がないので、腰への負担を最小限にしながら下半身の筋力強化を行うことができます。
したがって、背の高いアスリートに対しては「スクワットやデッドリフトの量や頻度を少し減らして、その代わりに片脚エクササイズの量や頻度を増やす」というアプローチを取ることになります。
ただし、スクワットやデッドリフトは高重量を扱える(=筋力向上の可能性が大きい)有用なエクササイズなので、あえて完全に取り除くことはありません。
あくまでも量や頻度を少し減らすだけです。
もちろん、どうしてもスクワットやデッドリフトを安全に適切なフォームで実施できないという場合は、そこにこだわることもありませんが・・・。
③ヒップスラストを取り入れる
スクワットやデッドリフトの量や頻度を減らす代わりに実施するエクササイズとして、②で紹介した片脚エクササイズに加えて、ヒップスラストというエクササイズもオススメです。
背の高さに関係なく実施可能なエクササイズです。
ほぼ股関節だけの動きの単関節エクササイズではありますが、扱う重量も重いし臀部の大きな筋肉を鍛えることができるので、RDLと並ぶくらい使えるエクササイズではないかと最近は考えつつあります。
ヒップスラストについて詳しく知りたい方は、コチラのブログ記事を読んでみてください。
④足関節の筋力やモビリティは別途、鍛える
スクワットは踵重心でケツに負荷をかけるようなフォームで実施し、また、片脚エクササイズを多めに取り入れる、となると、ウエイトトレーニングにおいては足関節をダイナミックに動かす機会が少なくなります。
それだと足関節周りの筋力やモビリティが向上できないので、そこは別途、鍛えることになります。
たとえば、カーフレイズやトウレイズのような単関節エクササイズを用いて足関節周りの筋力を鍛えます。
多関節エクササイズを中心にプログラムを作るのがウエイトトレーニングの基本ですが、それだけだと鍛えられない箇所については、単関節エクササイズを補助的に使うのは適切な判断でしょう(コチラで説明したように)。
また、足首モビリティを向上あるいはキープするために、ウォームアップやウエイトトレーニングのセット間に必ず足首モビリティドリルや下腿のsoft tissue workを取り入れるようにします。
場合によっては、クールダウンでも足首のストレッチを実施させます。
まとめ
背が高く大腿部が相対的に長いアスリートに対してウエイトトレーニングを指導することを想定して、いろいろと考えてみました。
バスケ選手にかぎらず、バレー選手やそれ以外の競技であっても、同じような体型のアスリートに対して当てはまることだと思います。
これまでインプット型学習で仕入れた情報や、他のS&Cコーチとの議論、そして実際に大腿部の長いアスリートを指導した経験等を、私の頭の中で一度整理をしてみて、アウトプットしてみました。
2019/9/20追記
B2のバスケチームで1シーズンS&Cコーチとして活動をしてみて、身長が2m未満の選手であれば、身長のことは気にせずに普通にウエイトトレーニングやらせて問題なさそうだな〜という感想を持ちました。
また、2mオーバーの選手であっても、この記事で書いたようなことを気にすれば、普通にガシガシとウエイトトレーニングをやることは可能です。
選手によっては「俺は背が高いから他の選手と同じようにウエイトトレーニングできないぜ」という先入観を持ってしまっているケースもありますが、その先入観さえ取り除くことができれば、身長2mオーバーの選手であっても、普通にウエイトトレーニングをやって筋力を高めることは十分可能です。
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【編集後記】
食欲の秋ですね・・・。
体重が増えちゃいます・・・。