#69 シーズンオフのトレーニングだけで1年間戦えるカラダを作る事は不可能だっ!!

公開日: : 最終更新日:2016/04/04 S&Cコーチとしての思考, プログラムデザイン


 

DCTC Mens Soccer

 

前回のブログでシーズン中のトレーニングについてお話をしました。(試合期が長い競技では)オフシーズンにガシガシトレーニングをして体力が向上しても、シーズン中にトレーニングを継続しないとせっかく手に入れた体力が失われてしまうという主張をもとに、じゃあシーズン中のトレーニングはどうすれば良いのよという事について思いついたことをダラダラと書きました。

タイムリーな事に、この議論に関連したブログ記事を発見したのでご紹介します。

シーズンオフのトレーニングで1年間戦える体を作る事は可能か?

非常に面白いので読んでみて下さい。ここからの議論はこちらのブログ記事を読んで頂いたという前提で進めます。

 

「トレーニング」と「休息」

さて、上記ブログ記事と私のブログ記事とでは多少切り口が違います。私がシーズン中の「トレーニング(を継続する事)」の重要性を主に話しているのに対して、上記のブログではシーズン中のトレーニング・練習・試合による疲労の蓄積やその結果として怪我が発生する事を予防するための「休息」の重要性について主にお話されています。

この「トレーニング」と「休息」というのは真逆の概念のように一見感じられるかもしれませんが、そんな事はありません。まず、上記のブログでも述べられていますが、トレーニング効果(適応)が起こるのはトレーニングをしている最中ではなくてトレーニングから回復している休息中であるという基本コンセプトを理解する必要があります。この概念を理解できれば「トレーニング」と「休息」が真逆の事を指しているのではない事がわかるはずです。

要するに、この2つが合わさって初めてトレーニング効果がでるという事です。トレーニング刺激がない状態で休息をとっても、疲労は回復するけどトレーニング効果は期待できませんし、トレーニングをガシガシしても休息をとらなければ適応が起こらないのでトレーニング効果を得られず、それどころか疲労の蓄積により怪我をしたりオーバーワーク状態に陥る可能性もあります。

一番重要なのは「トレーニング」と「休息」のバランスを取るという事です。もっと細かく言うと「トレーニングと練習と試合とその他もろもろのストレス」と「休息」のバランスを取るという事です。

ちなみにここで言う「その他もろもろのストレス」とは、競技に関係ないことも含まれます。恋人に振られたとか、仕事で失敗したとか、飼い犬が死んだとか、徹夜で試験勉強をやらないといけないとか・・・。いわゆる体にかかるストレスの種類(競技に関するものかプライベートに関するものか)について人間の体は識別する事ができず、ストレスは種類に関係なく同じストレスとして蓄積されていくという事です(英語で言うとstress is additive)。例えば学生アスリートの試験勉強期間中はトレーニングの強度や量を減らす等の工夫をしてストレスの総和をコントロールするという事も必要かもしれません。

 

オフシーズンのトレーニングが不十分だったからシーズン中に負傷者が続出?

少し話が脱線したので戻します。

上記のブログでは、「サッカーのシーズン中に負傷者が続出しているのは、シーズンオフのトレーニングが十分でなく、1年を戦い抜く体を作れてないから」というネット記事(あるいは新聞記事?)の論調に対して、疑問を呈しています。いやいやそうじゃなくて「ストレス(負荷)」と「休息」のバランスが崩れて(この記事のケースでは)疲労が蓄積したからであって、シーズンオフにガシガシトレーニングしたかどうかは関係ないでしょって話です。まったくその通りだと思います。

「オフシーズンの短期間にガシガシトレーニングしたら1年を戦い抜く体を作れる」という理論はどこから来たのでしょうか?まったく馬鹿げた考えです。そんなわけねーだろー!!論理的に説明してみろや〜!!おりゃ~・・・っと少し熱くなりました、失礼。

でも、プロ野球とかJリーグ選手のシーズンオフの自主トレに密着したテレビニュース等を見ていると、選手自身が「このオフに自分の体をイジメ抜いて長いシーズンを戦い抜ける体を作りますよ!!(withドMな笑顔)」的な発言をしているのを良く目にします。

そう考える事でオフシーズンのトレーニングに対するモチベーションが上がるならアリかな〜と少しだけ思わないでもないですが、でもその考えのままだと「シーズンオフに死ぬほどトレーニングしたからシーズン中はあまりトレーニングしなくても大丈夫」とか「シーズンオフに死ぬほどトレーニングしたからシーズン中は休息や体のケアを重視しなくてもシーズン最後まで戦える体が出来上がっているはずだ」とかいう間違った幻想を持ってしまう危険性があるので、やっぱりその理論は間違ってるとアスリートには理解してもらうほうが良いと思います。

もちろんシーズンオフにがんばってトレーニングする事を否定しているわけではありません。

 

シーズン中に負傷者が続出する原因

ちなみに上記ブログで紹介されているサッカー記事のケースでは、負傷者が続出している原因として蓄積疲労を挙げています。これは「休息」を「ストレス(負荷)」が上回ってバランスが崩れている状態と考えられます。こういう場合は適切なタイミングで適切な休息をアスリートに与える事が解決方法となります。決してオフシーズンに死ぬほどトレーニングする事は解決方法とはなりません。

その一方で、これとは逆にトレーニングによる「ストレス(負荷)」が不足している事で怪我につながる場合も考えられます。

例えば、プロ野球の選手が蓄積疲労により怪我をするのを心配するあまり、シーズン中の練習で全力でのスプリントを一切禁止したとします。確かに全力でのスプリントは負荷強度が高く、ハムストリングの肉離れ等につながる危険性があります。しかし、だからと言って完全に全力スプリントの練習をやめてしまうと、体がスプリントというストレスに対して準備ができていない(あるいは耐性がない)状態になってしまい(detraining)、試合中に全力疾走する場面が訪れた時に逆に怪我をする可能性を高めてしまう事になりかねません。

 

シーズン中のケガを予防するには?

ここまで話すと「休息が足りないと怪我をするし、トレーニングが足りなくても怪我をするって、じゃあ一体どうしたらいいんじゃい?」という疑問が沸くかもしれません。

それに対する私の答えとしては「適切な強度・量・頻度でトレーニングをして、適切なタイミング・量で休息をとり、ストレスと休息のバランスを取る」という事しかありません。これは難しい事かもしれませんが、正しい知識をもって論理的に物事を考える事ができるS&Cコーチにとっては不可能な事ではありません。

上記ブログを読んでいて「うんうん、シーズンオフの短期間だけで一年を戦えるカラダを作る事は不可能だよな〜」と共感している時に、同じような内容のブログ記事を昔に書いた記憶がよみがえりました。自分の過去のブログ記事を探していたら見つかりました。

セミナー報告「『サッカーのペリオダイゼーション』イントロダクションセミナー」

このセミナーはオランダ人のサッカーコーチのレイモンド・フェルハイエン氏が来日した際に実施したセミナーで、その時に通訳を務められていたのが上記ブログの筆者の相良さんでした。偶然ですね。それとも必然?

とりあえず共感したことは、オフシーズンだけで1年戦い抜くカラダを作る事は不可能だし、そういう考えでいきなりオフシーズンにトレーニング強度・量をMAXにしてしまうと怪我の可能性が高まるから徐々に強度と量を上げていく(漸進性とかprogressionという概念)のが重要だという事。

そして、オフシーズンの短期間で体力を向上するのは難しくて、しかもその短期間で向上したわずかな体力もその後トレーニング量を大幅に減らしたら短期間で失われてしまうという事。

普通に考えれば当たり前の事です。常識と論理的な思考があればわかることで、別に専門の勉強さえも必要ない事だと思います。

 

まとめ

なんだかまとまりのない文章になってしまいました。まとまりのない内容をまとめるのが面倒なので、今回もまとめません(笑)!!

 

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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