#410 アスリートがトレーニングに使える時間は限られているという事実を肝に銘じておくべし

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大学・大学院でスポーツ科学やストレングス&コンディショニングについて学び、その後、実際にスポーツ現場でアスリートを相手にトレーニング指導をするようになって、「これは学校の授業や教科書では学ばなかったな〜」と思うことがいくつかあります。

その中のひとつが「アスリートがトレーニングに使える時間は限られている」という事実です。

 

 

アスリートがトレーニングに使える時間は限られている

これまで私は、フルタイムに近いスケジュールで競技に専念できるアスリートを中心にトレーニング指導に携わってきました。

そんなアスリートであっても、トレーニング指導のために私に与えられる時間は「週2回×90~120分」というのが典型的なものでした。

学校に通いながら競技をしている学生アスリートや、会社に勤めて仕事をしながらアスリートとしても活動している人の場合は、トレーニングに使える時間はさらに限定されます。

そう考えると、アスリートがトレーニングに使える時間がいかに少ないかがお分かりになるかと思います。

 

私が大学や大学院で勉強していた時には、「時間的制約」という条件を想定せず、理想的な条件下で体力を高めるベストの方法は何か?といったことを学んでいた気がします。

それはそれで意義のある勉強だったと思います。

しかし、それをそのまま実践することは難しいので、スポーツ現場で働くようになってからは「いかにして与えられた時間の中で最大限の効果を引き出すか」を考え続けてきました。

別の言い方をすると、トレーニングの「効果」だけでなく「効率」も意識するようになったということです。

 

 

トレーニング効率を上げるための工夫

私がトレーニング効率を上げるために工夫していることをいくつか紹介します。

  • ①優先順位をつける
  • ②一石二鳥の効果を狙う
  • ③競技練習とトレーニングで、身体が受ける刺激が重複しないように

 

①優先順位をつける

時間が限られているということは、やりたいことが全てできるわけではないということです。

もうそれは仕方がないので、割り切って受け入れないといけません。

となると、与えられた時間の中で、どれをやってどれを切り捨てるかを決めるためには、優先順位をつける必要があります。

 

たとえば、ウエイトトレーニングで言うと、スクワットやデッドリフトのように高重量を大きな可動域で扱えるエクササイズと体幹とかコアとか言われる胴体部分を鍛えるエクササイズ。

優先順位は前者のほうが高いです。

胴体部分を鍛えるエクササイズも効果がないとは言いませんし、私自身、プログラムに取り入れています。

しかし、たとえばトレーニングに使える時間が1回あたり90分しかない状況で、そのようなエクササイズを30分とかやり続けるのはナンセンスです。

そのようなエクササイズをやらせること自体は害ではないですが、それに時間を使いすぎて、他のもっと優先順位の高いエクササイズに使える時間が制限されてしまうのであれば、それは間接的にアスリートに害を与えていると言っても過言ではないでしょう。

 

ある意味、適切に優先順位をつけることができるのもS&Cコーチとしての能力だと言えるかもしれません。

 

 

②一石二鳥の効果を狙う

完全に私の偏見で申し訳ないですが、メディカル系のバックグラウンドを持つ方が、S&Cについてイチから学び直すことなく、もともと持っている知識だけでアスリートにトレーニング指導をされている場合、リハビリでやるような部位別の細かいプレハブドリルやコレクティブドリルと言われるようなものを永遠とやらせている印象があります。

つまり、エクササイズの数がめちゃくちゃ多いプログラムを作ってやらせているのです。

 

大ケガをしていて練習に参加できないリハビリ中のアスリートの場合、時間はたくさんあるので、それでもいいとは思います。

むしろ、練習に参加できないのであれば、リハビリでたくさんのエクササイズをやることである程度の運動量を確保して持久力の著しい低下を防ぐ、というのは好ましいことなのかもしれません。

しかし、ケガをしていない健康なアスリートのトレーニングとしてはどうなのかしら?と疑問です。

圧倒的に効率が悪いのです。

 

たとえば、ACLを予防したいからといって、ジャンプ着地時にニーインしないように意識しながらジャンプ着地の練習をさせたり、片脚でのスタビリティ向上のために中殿筋・内転筋・体幹側部(内外腹斜筋、腰方形筋etc)を鍛えるドリルをそれぞれ2、3種類やって・・・というのはよくあるパターンです。

私だったら、スクワット・デッドリフト・リバースランジ・RDL等を中心にウエイトトレーニングをがっつりやってもらいます。

そうすればACLだけでなく、他のケガのリスクも同時に下げられます。

ハムストリングや内転筋の肉離れとか足首の捻挫とか。

さらには、筋力や柔軟性も同時に鍛えられます。

一石二鳥どころか三鳥、四鳥なんです。

まずはドカンと複数の効果があるトレーニングをやっておいて、それで足りない部分だけ細かいドリルで補うという考え方のほうが健全です。

» 参考:アスリートの傷害予防は適切なトレーニングが9割:◯◯予防トレーニングというパッケージ化の問題点

 

メディカル系のバックグラウンドをお持ちの方でも、気づいている方は気づいています↓

 

 

③競技練習とトレーニングで、身体が受ける刺激が重複しないように

たとえば、持久力向上のためには、最近は「polarized training model」と言って、高強度のトレーニングと低強度・ハイボリュームのトレーニングを組み合わせることが推奨されています。

» 参考:【Polarizedトレーニング】持久力を向上するために最適なトレーニング強度の配分の仕方

 

しかし、低強度・ハイボリュームの持久力トレーニングをやる時間を確保するのは、持久系競技以外のアスリートにとっては非常に困難です。

じゃあ、どうすればいいでしょう?

競技練習を観察してみると、時には高強度で動く場合もありますが、平均的には低強度での運動を長時間行っているケースが多いはずです。

つまり、あえてトレーニング中に低強度・ハイボリュームの刺激を与えなくても、競技練習そのものが低強度・ハイボリュームの刺激になっているので、トレーニング中にはそれとは別の刺激、つまりこの場合は高強度のトレーニング(例:HIIT)を処方するのが効率が良いと判断できるのです。

 

ウエイトトレーニングについても、競技練習中は「競技特異的」な動きを「これでもか!」っていうくらい繰り返しているはずなので、あえてウエイトトレーニングで「競技特異的」なエクササイズをやらせる必要はありません。

競技練習ではできないような刺激をトレーニングで与えてあげればいいのです。

つまり、練習とトレーニングで身体に与える刺激がかぶってしまうと効率が悪いので、練習の内容や特徴をあらかじめ分析したうえで、それと重複しないようにトレーニング内容を選んであげましょうということです。

 

 

まとめ 

学校の授業や教科書だけでは学べないこともあります。

そういったことに直面した時には、目の前のアスリートの状況に真摯に向き合い、どうすればベストのサービスを提供できるのかを頭を使ってトコトン考え続ければ答えは出てくるはずです。

「自分の頭で考えること」と「アスリートへの愛」。

これがキーワードです。 

今回は1つの具体例として、「アスリートがトレーニングに使える時間は限られている」という問題に直面したときにできる工夫について紹介してみました。

 

 

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【編集後記】

前職場を退職する時の送別品としてギフトカタログで選んださくらんぼが届きました。うまし!!