ピーキングとテーパリング
現在、韓国の仁川でアジア大会が開催されています。
このような大きな大会に向けて、アスリートは一般的に「ピーキング」とか「テーパリング」とか言われるものを実施します。
それらの言葉が意味するところを簡単に説明すると:
- ピーキング:狙った試合にベストの調子で臨めるように、コンディションを上げていく・調整すること。
- テーパリング:徐々に練習・トレーニングの量や頻度を減らしていくこと。
ということになります。
この2つの用語はほとんど同義語のように使われていますが、実際には異なるコンセプトを表した言葉だと私は捉えています。
じゃあ2つの違いは何かと言うと、「ピーキング」という目的を達成するための手法の1つが「テーパリング」であるというのが現時点での私の考えです。
「ピーキング」を達成するための手法はいろいろありますが、「テーパリング」はあくまでもそのうちの1つに過ぎないということです。
ただし、「ピーキング」を達成するために使われる手法の中では、「テーパリング」が最も役割が大きく最も一般的に使われる手法なので、2つの用語がほぼ同義語的に使われるようになったのかな〜と推測しています。
フィットネス-疲労理論で考える
ここで、「テーパリング」をするとなぜ「ピーキング」につながるのかという疑問が湧くと思います。
その理由は、以前のブログで説明した「フィットネス-疲労理論」をもとに考えるとわかりやすいです。
試合がない時期に通常の練習やトレーニングをしている段階では、多少の「疲労」が蓄積された状態で練習やトレーニングを実施しています。
しかし、大事な試合に向けて「テーパリング」を実施すると「疲労」が取り除かれるので、「フィットネス」と「疲労」の合計である「Preparedness(いわゆるコンディションのこと)」は上がっていく、ということになります。
ここで理解しておくのが必要な点がいくつかあります。
ランダムに説明します。
- 「テーパリング」をしても「フィットネス」が急激に向上するわけではなく、「疲労」が取り除かれることによって今まで隠れていた真のフィットネスが出てくるだけ。
- 「テーパリング」期間中は「Preparedness」は上がるけど、「フィットネス」は少しずつ落ちていく(可能性がある)。
- 「フィットネス」の低下よりも「疲労」の減少のほうが早く進むから、結果としてその合計である「Prepardness」が上がっているだけ。
- 「テーパリング」期間が長引くと、ある段階で「疲労」はほとんど取り除かれてゼロになってしまい、そこから先は「疲労」の値に変化はなく「フィットネス」のみが落ちていくから「Preparedness」も下がる可能性がある。
- 最適な「ピーキング」を達成するには、「テーパリング」の期間の長さの設定が重要になる。
- 最適な「テーパリング」期間は、「テーパリング」開始時点での「疲労」の大きさや(つまりその前の期間にどんなトレーニングをしたか)、「テーパリング」中にどの程度の早さ・形でトレーニングや練習の量・頻度を落としていくか等によって変わってくる。
ようするに何が言いたいのかというと、ベストな「テーパリング」方法を見つけるにはいろいろと複雑な要因が関わってくるから、非常に難しい作業だということです。
難しいのは難しいのですが、「フィットネス-疲労理論」のコンセプトをもとに考えることができると、多少は頭の整理ができて役に立つのではないかと思います。
まとめ
さらに深く「ピーキング」や「テーパリング」のコンセプトについて学びたい方は、「Tapering and Peaking for Optimal Performance」という本がオススメです。
著者のDr. Mujikaはこの分野の研究で世界的に有名な第一人者です。
また、「High-Performance Training for Sports」という本の第22章もオススメです。著者のDr. Haffは私がアメリカに留学していた時の恩師です。
以上、タイムリーな話題について書いてみました。
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【編集後記】
プルコギの味は安定感があります。ハズレはほとんどありません。